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繁盛経営研究レポート

トップページ > 繁盛経営研究レポート

繁盛し続けるために大切なこと

私の知り合いに通販業界で歳若くして短期間で
10億円もの売上規模の会社を作り上げた人がいます。

私の息子ほどの歳なのですが、私のビジネスの師匠です。
(もっともこちらが勝手に弟子だと思っているだけですが)

その人がいつも話をする「商売をするのに大切な考え方」
というものをご紹介してみたいと思います。


この考え方を聞いたとき、
私は今まで目の前でモヤモヤしていた商売のカラクリが
はっきり見えてきたように感じました。

この考え方は、あなたにとっても、きっとためになると思います。

とっても大事な話ですので心して読んでくださいね。

まずは、私の師匠の名前をご紹介します。

エキセントリックデザイン株式会社
代表取締役 岡野 弘文 氏

彼や彼の会社については、下記のURLで確認してみてください。。

http://www.okano.ne.jp/

では、彼が話している「商売をするの大切な考え方」とは
どういうことなのでしょう。


まず、下の図をみてください。

商品の要素.JPG


これは、岡野氏が講演のときによく使っている図です。

その図の中の文字を、私なりに飲食店用に替えてお見せしています。
本来の図は、
「商品」→「伝えること」、
「売る方法」→「伝える方法」となっています。

岡野氏の講演では、
自社の商品の良さをいかにしてお客様に伝えることができるか?
がテーマになっていることから「伝えること」「伝える方法」
という言葉になっているのです。


でも、飲食店という商いをしているあなたには
これではわかりにくいでしょう。

「伝えること」ってなんだよ? というとこですものね。
ですから、あなたにとって身近に感じられるような言葉に
替えて話をしていきます。

実はこの簡単な図にこそ、
商売繁盛の基本的なポイントが示されているのです。


「商品」とは、あなたのお店で作っているお料理や
あなたによって厳選されたドリンク類といったもの。

「売る方法」とは
営業方法とか店内の接客方法とか、どのように宣伝したら良いかとか、
口コミをどうして発生させるかなどといった、販売方法のこと。


ここまでは、わかりますよね。

商売であれば、必ず「商品」は存在しますし、
その「商品」をどうやって販売するのかという「売る方法」も
必ず考えていかなくてはならないものです。

あなたの創作したお料理を、どのようにしてお客様に宣伝し、
どのような雰囲気で提供するのか、といったことも
「売る方法」ということです。

商売を繁盛させたいと考えている人は
この「商品」と「売る方法」という2つの要素に
磨きをかけようとするはずです。

「商品」である料理がライバルよりもおいしくて、
お店の雰囲気やお店のスタッフのサービスが行き届いていて、
上手に宣伝をしていけば、必ず繁盛するはず、と考えます。

もちろん、それは大切なことで
商売繁盛の重要な要素であることに変わりはありません。

ところが、どうもそれだけでは繁盛が続かないのです。
一時的な繁盛は確保できても、1年2年するうちに
いつの間にか、「繁盛は遠い昔の話」となってしまうのです。


「もう、このようなスタイルの時代は終わったんだな」
「現代のお客層に合わせた料理を工夫しなくては」
「お店の雰囲気が今の流行に外れているんだ」

などとこの2つの要素について見直す人は多いと思います。

しかし、ここで大切なことを忘れているのです。

あなたが磨きをかけてきた2つの要素は、
先ほどの図で言えば、商売の大切な要素の上半分だけのことなのです。

商売繁盛の秘訣は、実は、図の下半分の要素にかかっているのです。

では、ここに入る要素とは、いったい何なのでしょう?


それは、「信頼」という文字です。

そう、商売にとって「商品」や「売る方法」よりも
ずっと大切な要素となるのが、「信頼」なのです。

「信頼」ってわかりますよね?

「嘘をつかない」
「約束は守る」
「口先だけではない」
「グラグラしていない」

などといった行動で培われていくお客さんの心の中にできる感情です。

こう言うと、
「そんなことわかってる、ウチも信用第一にやっているんだ」
という人がいます。

そういう人に、
「そうだよね。でもあなたの言っている『信用』ってどういうもの?」
と聞いてみると、どうもはっきりしないのです。


「ウチは材料を自分の目で吟味して買っている」
「ウチは仕込みに手抜きは一切していない」
「伝統の味をかたくなに守り通している」

まだまだ、答えは一杯でてくると思います。

たしかに、どれも信用や信頼を得るための努力であることには
変わらないのですが、私はこう思うのです。


「信頼とは、あなたの言うことをスンナリと信じてくれること」

もう一度いいます。

「信頼とは、あなたの言うことをスンナリと信じてくれること」


つまり、あなたが、

「ウチは材料を自分の目で吟味して買っている」
「ウチは仕込みに手抜きは一切していない」
「伝統の味をかたくなに守り通している」

言ったら、スンナリと「わかった」と思ってくれる状態であるということです。


いくらあなたが「・・・だ」と言ったところで、

「またまた、うまいこといっちゃって・・・」

なんて思われたとしたら、それは信頼なんて微塵もないということです。


じゃあ、どうすればいいののか、という話です。

あなたはこのように考えているのかもしれません。

「自分の料理を1度でも食べてみてくれれば、わかるはずだ」
「一度でも店に来てくれれば、
自分のやっていることがわかってもらえるはずだ」

そのとおりですね。

あなたほどの方であれば、一度でもあなたの料理を食べれば、
そして一度でもあなたワールドに身を置けば、
あなたのトリコになるはずです。
つまり信頼されてるはず。


でも、????????
 

そんなはずはないですよね。

もし、そうであれば、商売なんていとも簡単な活動です。

はっきり言います。

あなたが信頼されていなければ、どんな料理を出しても、
どんなワールドに浸ってもあなたのお客様には絶対になりません。


一方でその逆にであれば、つまりあなたに信頼があるならば、
それほどの料理でなくても、それほどのワールドでなくても、
お客様は何度でもあなたの誘いに応じてくれるのです。


商売の3要素で「信頼」がまったく無く、
「商品」と「方法」だけのスタイルを詐欺と言います。

どんなお客様でも一度ぐらいは、だまされてもらえます。
お客様の購買行動を研究し、お客様の感情にうまく訴えかければ、
あなたの誘いにのって、お客様は来店してくれます。

そこであなたのお店の商品が、宣伝文句に違わず
おいしいものであれば、あなたのお店の信頼は築ける、
と思ってしまいます。

ところが「信頼」というものはそれだけでは築けないものです。
「信頼を築く」ということは「商品的な信頼」だけじゃないのです。
「信頼」とは「人間的な信頼」なのですね。


人間的な信頼・・・・?

どういうことでしょうか?


あなたにも家族がいると思います。
あなたは家族を信頼されていますか?

あなたが家族に対する感情が「人間的な信頼」というものです。

たとえ家族のだれかひとりが、あなたに悪さをしようと、
あなたはその悪さという行動を、ひいき目にみるはずです。

「あいつがやったことは悪気ではない」
「あいつは本来はいい子なんだから」


このような感情は、家族だから生まれるのでしょうか?
家族に対する信頼とは、特別な感情なのでしょうか?

私は、決してそうは思わないのです。

もちろん、飲食業という商売の上で、たくさんの他人様に
家族と同じような信頼感を築くことは楽なことではありません。

しかし、あなたが商売にとって何よりも大切なものが、
「信頼」というものだと、わかっているのであれば、
あなたの日常の行動は違ってくるはずです。


あなたは、お客さんとの約束は大切にするけど、
取引業者さんとの約束はそれほど気にしていない、
なんてことはありませんか?

待ち合わせ時間に遅れたことはありませんか?

後で連絡すると言って、忘れてしまったことはありませんか?

自分がやると決めたことを自ら破っていることはありませんか?

一度決めたことをすぐに撤回するということはありませんか?


すべてがあなたの「信頼」に影響するものです。


「そんなことはない。料理とサービスがよければお客様は来る」


そうですね。
あなたの商売をどちらの方向に舵をとるのかはあなたの自由です。

しかし、あなたがもっと楽しく商売をするためには、
「信頼」を要素に入れる経営に舵をとることをお勧めします。

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このページは、コンテンツページ内にあるノウハウのPDF版を

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ノウハウによっては、ページ数が多く、ブログ上では読みにくいものも

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■■飲食店繁盛の黄金法則

 「経営が苦しいお店を救うのは集客のための宣伝だ」という言葉を信じて

多くの飲食店が潰れていきました。苦しいお店を救うのは宣伝ではありません。

このレポートは、経営に悩み、月末になると支払のことで生きた心地がしない

という料理店経営者にぜひ読んでもらいたくてつくったものです。

あなたはきっとボタンを掛け違えているのです。早く気がついてください。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-101

そして再度、「経営者の真の仕事とは・・・」について前述したPHP研究所の講義の
中からの難解な一節をご紹介しておきます。
 
  「独自の経営哲学」のもとに、
  ヒト、モノ、カネ、時間、情報に代表される「経営資源」を、
  有効適切なる「経営管理技術」を駆使して「付加価値」を創造し、
  「利害関係者」に対して「存在価値」を発揮し、
  活力を持った「組織体」として、
  永遠に「存続価値」を確立すること。
 
最後までお読みくださいまして、ありがとうございます。
 
“黄金の法則”なんてたいそうなタイトルにしてしまいましたが、そんな誰にでも
共通して使える法則なんてものはあるはずはありません。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-100

そうであれば、儲かったからセミリタイヤという
選択を料理店のオーナーさんには
してもらいたくはありません。
 
いつまでもいつまでも、その独創的な価値をあたえ続けるための工夫と努力をしても
らいたいと願っています。
 
あなたのお店はあなたの利益だけのために存在しているのではありません。
 
あなたのお店は多くの関係する人たちの必要のために存在しているのです。
 
利益とはそれを継続させ続けるための燃料と考えてみたらどうでしょう。
お店が利益を追求していく意味が見えてくるのではないでしょうか。
 
 
最後に、私がとても好きな一節を、『マイゴール』 リチャード・H・モリタ著
(株式会社イーハトーブフロンティア出版)からご紹介します。
 
  人生で心の平安という精神的自立と、経済的自立という金銭的な
  安定を獲得したとびきりの成功者は、すべて皆“自分の法則で生きている”
  ということなんだ。
  成功の法則、幸せの法則・・・それは、他の誰かがつくった法則を勉強し、
  それを真似て生きるようなものではない。
  人は、他の誰とも違う。
  自分らしさの中で生きてこそ、幸せを実感できる。
  もっともっと独創的に、個性的になりなさい。
  自己実現だよ。
  自己実現とは、たとえ誰かの良い意見であっても、それに左右されないで
  生きることができることだ。
  そしてもう一つ、それは苦労して掴み取ったものであっても、それに
  固執しないようになること。これが真の自己実現の姿だ。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-099

「あら、ここにあったお店、やめちゃったのかしら? いいお店だったのにね、
お料理もおいしかったのに・・・」
こんな光景が、どの街にも必ずあるものです。
 
企業の目的が存在価値を発揮して存続することにあるのであれば、飲食店といえ
どもいつまでもその存在価値を保っていくのが理想です。
 
存在価値とは、利用するお客様をはじめとして、そのお店に材料を提供することに
よって支えている各種の業者さん達、そして資金を用意してくれた金融機関、
またその借入を支援してくれた連帯保証人の方、さらにはそこで働く人々などなどの
人たちに、「なくなってもらいたくない」という実感をもってもらえることです。
 
料理店という事業が利益を必要とするのは、この存在価値をいつまでも存続させる
ためになくてはならないものであるからです。
言い換えてみれば、料理店の利益とは、さまざまな利害関係者がいつまでも恩恵を
受け取ることができようになるためのものなのです。
 
 
「一攫千金」という言葉があります。
「セミリタイヤ」という言葉もあります。
 
大きく揺れ動く現代社会の中で、知恵を駆使してお金を儲け、そして若くして現役を
退き、悠々自適の生活をエンジョイする姿は眩しく見え、誰しも憧れることと思います。
 
このような人たちをけっして否定するわけではありませんが、飲食店を経営する方で
あれば、その方はたくさんのお客様をはじめとした多くの利害関係者に恩恵を与えて
います。
 
そして、料理を食べに来店するお客様たちは、そこにしかない独創的な価値をもらっ
ているのです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-098

「はっきり言えば、すべての人に適用できるノウハウはありません。会員の皆さん
一人一人の環境や性格によっていろいろだと思っています。強いて言うならば、
会員の皆さんがこの2つの力を自分達のオリジナルのやり方で実践していくのを、
私が監視をしていくという図式になればいいと考えています」
 
「じゃあ、見張り番ってとこですね」
 
「うまい表現ですね。たしかにその通りです。でないと、皆さんすぐにやめてしま
いますからね。」
 
「そりゃそうだ。こんなことを一人だけでやろうとしたら、絶対にできないという
ことだけは自信を持って言えますね」
 
 
貯める力と増やす力を自分のものとするには、まずこの2つの力が自分に必要で
あることを心の底からわかる必要があります。
 
若いときにしかできない遊びもあります。
若いときにしか味わえない楽しみもあります。
それをすべて我慢して将来のために貯蓄をしろとは酷な話かもしれません。
また、この2つの力はしっかりと稼ぐことができた後に考えても遅くはない、
と思われるかもしれません。
 
このような言い分もわからないわけではないのです。
でも、自分が死ぬ間際にこの世に生まれてきたことをよかったと思った人の
多くは、死ぬ直前の人生に満足した人である
、と言われています。
 
「若いときにはよかったのに、今ではこんな状態だ。ああ、あの頃に戻りたい!」
「若いときは辛抱のしどうしだったけど、それが今の幸せを叶えてくれている!」
 
まさに“アリとキリギリス”。
さて、あなたはどちらを選択するのでしょうか?

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-097

このような自分への投資やお店への投資は、そのお金が直接的に増えるというもの
ではありません。
このような投資は遠い将来への種まきとも言える投資になります。
しかし、それが見事に実を結べば、その投資したお金は何倍にも増えてあなたの
もとに帰ってくることになるのです。
そして、あなたには明るい未来を迎えることの可能がきっと見えてきます。
 
 
「へぇーー! 雲をつかむような話になってきましたね。でも話の中身はその通り
だと思いますよ。初めの話にもあったように、何もしていなければ将来は真っ暗
ですものね。
正直言って、今は考えたくない話ですよ。でも現実はそうなんだからその現実を
しっかり見つめなきゃいけませんよね。本当に、私たちなんて何の保証もないの
だから」
 
「少しはわかっていただけましたか?」
 
「少しはね。でも、じゃ具体的にどうすればいいのですか? この2つの力を身に
つける方法あれば教えてもらいたいですよ」
 
 
   “貯める力”と“増やす力”はテクニックでは
   ありません。それが必要だと認め、それに正面から
   対峙する意思を持つということです。
   若い料理人さんには、今考えることではないと
   思われるかもしれません。
   でも、56歳を迎えた私の経験から言えば、思ったよりも
   年月は早く経ってしまうということです。
   そして、誰にでも必ず老後はあるのです。
 
 
「残念ながら、今現在では具体的な方法はありません。このテーマは私どもの
研究会として会員の皆様と一緒に探していくものだと考えています。先ほどの、
収入の中から1割を貯金する、というものだって、一つの提案に過ぎません。
絶対にそれでなくてはというものではないと思っています」
 
「それじゃあ、研究会ではノウハウはないということですか?」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-096

そう考えるならば、当然、銀行の預金よりも投資信託の方が割がいいし、株式の
ほうがもっと割がいい、と言うことになります。
 
「株は素人がやっても儲からない」とは真実だと思いますが、それは3年や5年での
期間の中で言えることであり、10年、20年という長期で見てみれば、株式の
値上がり率は、過去の実績を見てみてもインフレ率よりも高いという数字が出で
います。
 
株式の売買を短期間での上げ下げでとらえるのではなく、その会社の将来性に出資
をし、配当金をもらいながら長期的な利ざやを期待するのであれば、それも悪くは
ありません。
しかし、そうは言ってもやはり株式はハイリスクの投資であることには間違いあり
ませんので、無学のまま飛び込むのは危険な行為だと思います。
 
ここで投資という考えを、他人に預けるのではなく自分に預ける、つまり自分への
投資
ということに目を向けてみます。
自分への投資とは、自分の能力を磨くためにお金を使うということです。
 
世の中をよく見てみると、稼いでいる人ほどよく勉強をされているようです。
そして、その勉強代も稼いでいる人は半端ではありません。
勉強すれば必ず儲かるとは言い切れませんが、自らが学ぶ姿勢を持つということは、
儲かる経営には欠かせない要件だと思います。
きっと、さまざまな知識を勉強する中から自分の老後を幸せにする知恵を授かる
ことができると思います。
 
さらに、今度は、投資を自分のお店へと考えてみます。
内装などの付帯設備も投資の内なのですが、人材への投資も大事なことです。
事業は人によって良くも悪くもなります。
給与以外に従業員の教育に投資をしていくことは大切なことだと思います。
 
ましてや、自分が引退した後の担い手を養成することは事業を存続させるためには
絶対に必要なことです。
自分の子供に継がせるのであれば、子供にはそれなりの教育という投資をして
いかなければなりません。
後継者としての教育は学費とは別のものです。
現在の日本には、事業の後継者を育成する学校はありません。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-095

「それじゃあ、女房が文句言わないですかね?」
 
「当然、奥さんにもこの話はしておいてください。何もムダ使いをするという話
ではありません。貯金です。誰かにくれてやるというお金ではありません」
 
「そうだよな、困ればこれを使えばいいんだからな」
 
「いえ、それじゃダメです。この貯めているお金は、困ったときに使うものでは
ありません。収入の1割の貯金をしても困らない暮らしに変えるということ
です。
このお金はあること以外には、仕入れの支払いにもお店の経費にも銀行への返済
にも使わない貯金です」
 
「へえ、そうなんですか? 普段は使えないお金を自分のために貯めるということ
ですか? 何かしっくりこないですね。それでそのあることとは何のことですか?」
 
「しっくりこないのも当然です。今までこのようなことを考えたこともなかったはず
ですからね。それで、質問のあることというのが、“増やす力”の源泉となる資金と
してなのですよ。つまり“投資”です」
 
 
   投資は投機とは違います。貯めたお金を増やす
   というよりも貯めたお金を活かすという考えが投資です。
   自分自身を磨くために、お店の人材を育成するために、
   後継者の教育のために、活きたお金を使っていくことが
   投資と考えています。
   もちろん、お金にお金を稼がせるハイリスクハイリターの
   投資も含まないわけではありません。
 
  
投資という言葉を使うと、株式とか投資信託といったものを想像されると思いますが、
ここでいう投資とはもっと広い意味で解釈しています。
 
“増やす”ということですので、ある一定の金額のお金がお金を生むという現象を
意味することには相違ありません。
簡単に言えば、銀行に定期貯金をして自分は何もしないけれど利息分のお金が
増えていくといったものです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-094

“目的貯金”というものがあります。
海外旅行の資金を貯める、買いたい商品があるから貯める、子供のための学費を
ためる・・・。
このような、ある何かの目的を達成するためにお金を貯めることは、それでも
その目的がはっきりしていますので貯め続けることは比較的容易にできます。
 
ところが、この目的といったものがなかったとき、多くの人はお金を貯め続ける
ことが出来なくなります。
いったい何のために倹約までして貯めているのかという疑問が生まれてきます。
貯めても使うあてのないお金などあっても仕方ないと考えるのも当然です。
 
“貯める力”というのは、このような何の目的もなくただお金を貯める習慣をつける
ということです。
誰のために・・・?
もちろん自分の将来のために、です。
 
 
「それゃ、貯められるほど儲かっていれば、誰だって貯められるんじゃないです
かね。でも、ウチでは今はそんな余裕なんて考えられないですよ。そんな余裕が
あれば借金でこんなに苦労しませんもの」
 
「ご主人、お気持ちはよくわかります。銀行への返済を止めてもらっている現状も
承知しています。でも、貯め始めなくてはいけないのです。それが“力”という
意味なのですから」
 
「うーん、ではいったいどうしろ、言うのですか?」
 
「はい、月当たりの経常利益の金額が出ますよね、売上から仕入と月の経費を引いた
残りの利益のことです。通常はその金額がご主人の家庭の生活費と消えてしまうので
すが、その金額のうちの1割を強制的に貯金するのです。仮に50万円の経常利益で
あれば5万円になります。この5万円は初めからなかったものと考えるようにして
みてください」
 
 
   収入の一割の貯金をするという方法は、昔の
   偉人たちが実践していたものです。明治時代に
   活躍した大富豪本多静六氏は独自の蓄財投資法
   の中で収入の4割を貯金したと述べています。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-093

「はい、日本人の平均寿命は年々伸びています。医学の進歩も長寿に貢献していす。
ご主人の世代では、ひょっとすると平均寿命100歳ってことになるかもしれないですよ」
 
「えぇぇ、それじゃ、60歳で仕事をやめたら100歳までどうやって暮らしていけば
いいのでしょうか? いったいいくらかかるんでしょうか?」
 
「計算すればわかります。1年間に240万円の生活費ですから、40年では9600万円
ということですよ。ただし、物価の上昇率は計算に入れていませんけどね。それに
将来は消費税も上がるし、老人医療補助も改定されるかもしれませんよね」
 
「そ、そんな! それじゃ早く死んじゃった方がいいじゃないですか?」
 
「はい、ですから、先ほど親父さんの死を『かえってよかったかも・・』と言ったのですよ」
 
「そういうことだったのですか。自分の老後のことがよくわかりました。このままで
いたら私もヤバイですね。いったいどうすればいいのでしょうか?」
 
「ここからが今日の話の本番です。いいですか、将来の最悪のシーンの可能性は誰に
でもあります。それを回避するには、今までご主人が習ってきた“お店を繁盛させる
力”の他にもう2つの“力”を身につけなくてはなりません。その2つの“力”とは、
“貯める力”と“増やす力”です」
 
「ほう、“貯める力”と“増やす力”ですか・・・!」
 
「ええ、言葉にすれば難しいものではありません。いちいち何であるかを説明する
必要はないでしょう。しかし、この2つを実践し続けることは至難の業なのです。
ですから“力”という文字が最後につけてみたのです。単に“貯める”のではあり
ません。“貯める力”を培うのです」
 
 
   貯めようと思っても貯まらないのがお金です。
   特に目的を定めない貯金は続けることができません。
   それが自分の将来のためとわかっていても
   できないのが貯金です。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-092

「ほう、それじゃあ、収入はゼロ。それで良く3年も暮らしていけましたよね」
 
「ええ、私のところには話はなかったのですが、他の弟子たちのところには
『働かせてもらいたい』って言っていたようでした。もっとも弟子は親父さんを
使うなんてできやしませんよね。それで奥さんが近くのお店にパートで雇って
もらってなんとか生活をしていたみたいですね」
 
「ご主人、今日お話をしておきたいのは、このように料理人さんが、遠い将来に
向かえてしまうかもしれない最悪のシーンなのです」
 
「えっ、私も、親父さんみたくなってしまう、ってことですか?」
 
「ならないって自信ありますか?」
 
「・・・・・・」
 
「ご主人、勤めている料理人さんでも世間並みの金額を退職時にもらえる人は多く
ありません。ましてやご主人のように自営の人はゼロです。しかし、料理人にも
賞味期限はあります。今でこそバリバリに仕事をしていますけど、50歳を過ぎれば、
あっというまに“食えない料理人”になってしまいます。今はご主人の魅力で来店
してくれたお客様もそれぞれが同じように歳をとり、そうそう外食もできなくなって
きます。かと言って、代わりに若い世代に目を向けても、今度は自分と話が合わない
のですよね」」
 
「・・・。何か、考えたくもないことですね」
 
「ええ、でもそんな時期は必ずやってきます。そしてきっと包丁を納めることになる
でしょう。それは即収入ゼロの始まりということです。でも、それでも日々の生活は
続きます。将来の物価は予想できませんが、仮に月の生活費が20万円として年間
240万円、5年で1,200万円、10年で2,400万円の生活費が必要ということになります。60歳でリタイヤしたとして10年たっても70歳ですよ。その時まだ生きていたとしたら、もっと生活費がかかるということです」
 
「考えたくなかったのですが、計算してみればそうなりますよね。でも、70歳じゃ、
今ではまだ初老ですよね」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-091

   「明日のお金は明日稼げばいい」と言うほど
   極端ではないのですが、若い料理人さんが老後のために
   準備をしているという話は聞いたことがありません。
 
 
人間は、どういうわけか、稼ぐときはその分、使うお金も多くなるようです。
生活費もそれなり、お付き合いもそれなりの出費になってしまいます。
 
稼ぎが多いときに将来のことを考えて、今を慎ましく生きるより、将来もきっと
こんな調子で行くことだからと考えて、今を十分に楽しもうと考えやすいのですね。
 
 
「あの親父さんも、ずっとこの道で苦労してきてね、さあこれから第二の人生と
いう矢先のことだったのです」
 
「なるほど、それは残念なことをしましたね。昔はそういう料理人さんが多かった
ようですね。若いときから結構無理を重ねてくるので、普通の人とは肉体の消耗が
はげしいのでしょうかね。で、ところでそんな親父さんなら遺産も結構あった
でしょうね」
 
「いいえ、ところがスッカラカンだったようですよ。まあ生命保険をかけてあった
らしく、奥さんは『もし、これがなかったら心中モノでした』と言っていました」
 
「そういう人って意外に多いのですよ。ウーン、それじゃ、親父さんにしてみれば、
 
それでかえって良かったとも言えるのでは・・・?」
 
「いったい、どういうことですか? それに、今日は料理人の老後の話って言って
いましたけど・・・?」
 
「ええ、つまりですね。たとえば、もしその親父さんが亡くならずにご健在でいた
とすると、月々の生活費というものが要りますよね。しかし、収入は勤め先を退職
してしまったのだから、年金だけという状態だと思います。ましてこの世界は世間
並みの退職金はもらえないですよね。ひょっとすると年金も基礎年金だけとか・・・・。」
 
「ええ、その通りだと思います。親父さんが最後に勤めたお店には5年ほどしかい
ませんでしたので、退職金なんてゼロじゃないかと思います。年金もどうですかね?
私は知りませんが、たぶん積み立てはしていなかったのじゃないかと思いますよ」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-090

料理人は、一般の企業人と比べると職の賞味期限は短いと思っています。
料理人にとって、人間基本的な感覚のうち味覚、視覚、触覚といったものは特に
大切なものです。
 
しかし、人間は歳とともにこのような感覚が鈍くなってくるのが普通です。
特に、視覚は50歳前後より老眼という症状を迎えます。
細かい調理技術を前提とする料理人さんにとって老眼は相当のハンディをもたらす
はずです。
包丁を使って調理するときには老眼鏡をかけ、それが済めばめがねを外すという
繰り返しになります。
端から見てもカッコイイ姿ではありません。
 
さらに、身体の衰えも隠せません。
調理場で不安定な一定の姿勢を続けなければならない料理人さんの腰は、50歳を
過ぎた頃よりきつい仕事をこなせなくなってくるのです。
腰痛を持病にもつ料理人さんも意外と多いのです。
 
当然ながら、このような賞味期限が切れた料理人さんには、雇う側も機会があれば
料引退を勧告されることになりますし、自営であればお客様自体が寄り付かなくなっ
てきます。
 
このような人間の老化は、それ自体しかたのないことだと思います。
料理の世界でも新旧の交代は良い意味での“新陳代謝”ということと捉えることが
できますし、それがあるからこそ、次の世代を目指してまた人が集まってくるのです。
 
でも、去っていく側にも、その後の幸せが待っている人と、残念ながらそうでない人
が存在してしまっています。
そして、私が見る限りにおいては、そうでない人のほうが多いと思えたのです。
 
その原因は、いろいろとあるとは思うのですが、最もありがちなあるひとつことが
想定できます。
それは“自分の一番いいときに、将来の準備をしていない”ということです。
わかりやすく言えば、所得が十分あるときに、将来への準備をしていないということです。
お店を経営している人であれば、繁盛して儲かっているときに貯蓄をしていないのです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-089

「エッ? ああ、“親父さん”ですか。たしか亡くなりましたね。勤めていた
お店を65歳で辞めてから3年ほどした時期だったと思いますが・・・。それがどう
しました?」
 
「ええ、今日、今から話すこととは、そういった料理人さんたちの老後の話なのです」
 
 
   料理人さんの現役としての寿命は一般の
   社会の人たちに比べて短いのでは・・・と思っています。
   中には高齢になってまで包丁を握っている
   著名な料理人もいますけど、多くの人たちは
   50歳を過ぎた頃から稼ぐ力が急速にダウンしてきます。
 
 
30年も料理人さんたちとお取引をしてきた私は、たくさんの料理人さんたちの行く
末を見させていただきました。
高齢のために料亭やレストラン、ホテルを円満退職し、優雅な余生を存分に楽しんだ
方もいます。
自分でお店を開業し繁盛店に仕立て上げて、そのお店を次の世代に譲って悠々と
引退していった方もいます。
 
しかし、このような、どちらかといえば幸せな老後を迎えた料理人さんの数は驚く
ほど少ない
のです。
 
高齢になっても明日の生活のためにどこかの飲食店にパートで働いているとか、
そういった働き場所もない人たちが意外にもたくさんおられました。
ひどい人になると、何所でどうしているのか全くわからない人もおられました。
 
その大方の人たちも、若い全盛期の時には、それこそ“飛ぶ鳥を落とす勢い”
であり、私たち業者には、恐いけど売上には大事な料理人さんたちだったのです。
 
勤め人であれば大勢の“若い衆”を抱え、自営であればお店にはいつもお客様で
溢れ、“よくぞ料理人に生まれけり”といった時代を満喫しているかのようでした。
 
ところが、そんな人たちも料理人としての全盛期が過ぎる年回りになると、
まるで『アリとキリギリス』の寓話の中のキリギリスように寒い冬を迎えて
しまっていったのです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-088

「ええ、とにかくやりたいことが次から次へと出てきまして、もう時間がいくら
あってもたりません。でも、不思議なもので、料理以外のことに忙しく頭を使って
いると、料理のアイデアも、ほら、なんと言いますか、ポンポン出でくるのです
よね。私が教わった昔の料理長が『仕事は忙しいヤツに頼め』ってよく言っていた
のを思い出しましたよ。それが今になってわかるような気がして・・・」
 
「ほう、依然とはずいぶん変わったことを言うようになりましたね」
 
「ええ、何か毎日が楽しく感じられるようになってきました。いえ、もちろんまだ
お店の資金繰りが楽になったというわけではありません。ちょっとでも手を抜けば、
売上はダウンしてしまいます。それだけに大変なのですが、とにかく何をすれば
どういった結果になるということはちょっとわかってきた気がします」
 
「因果関係というやつですね。結果には必ずその原因があるということです。
正確には“原因→過程→結果”ということですがね」
 
「そうなんですか? 難しいことは、まだよくわかりません。とにかく結果として
売上も以前に比べて180%ほどになってきています。
 
「なるほど、ではこの売上を続けていれば、銀行の返済が再び始まっても何とか
なりそうですね。ご主人の趣味であったパチンコも言っていない様子ですしね」
 
「はい、そんなところに行っているヒマなんてありません。とにかく時間がないと
いうのが現状です」
 
「結構です。それは良かったです」
 
「それで、電話でお願いしたことなのですが・・・・」
 
「はい。それだけじゃダメという話でしたよね」
 
「ええ、どういう話なのかが気になってしまって・・・」
 
「はい、わかりました。今日はその話をしにきたのですよね。その前に、ひとつ
聞きたいのですが、ご主人が調理技術を教えてもらった“親父さん”はまだご健在
ですか?」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-087

大石さんはただ聞いて欲しかった。
自分の実践している軌跡を知っていて欲しかった。
後で思い返せば、きっとそんな気持ちでの電話だったのでしょう。
 
そして、数少ないけど、成功したときの喜びの報告では、それこそ子供のように
はじゃいだ声で喜びを表現してくれました。
それは、まるでお客様との心理ゲームを楽しんでいるかのようだったのです。
 
そんなある日のこと、前回の話のことを思い出したのか、大石さんから電話が
ありました。
 
 
「あの、実はこの前にお会いしたときの最後の方の話なんですが・・・。最近、
なんだろうって気になってしまって、一度聞かせてもらえませんでしょうか?」
 
「えっ? あっ、そうそうあれね? お店の繁盛だけではダメって話ですよね」
 
「ええ、そのダメって話です。ダメって言われちゃうと、妙に気になって
しまって・・・」
 
「いいですよ。ご主人は時間がとれますか?」
 
「はい、今週でしたらいつでもかまいません」
 
「わかりました。では明後日の午後1時に伺います」
 
 
お店が繁盛するようになり、資金繰りが楽になってからでも十分だと思っていた
私は、無理に話を早める気持ちはありませんでした。
でも、私の最後の「ダメ」という言葉が気になっていた様子でした。
明後日の午後、私はお店に出向いたのです。
 
「こんにちは。ご無沙汰しています。その後はどうですか?」
 
私のいつものセリフです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-086

   いつでも相談できる人がいるということは、
   経営者の能力を何倍にも大きくするものです。
   お店を自力で持った料理人さんはすでに
   優秀なアイデアマンであるのです。
   ところが1,2回続けてうまく行かない出来事が
   起こると、自信を失ってしまい、次への挑戦を
   ためらってしまいます。
   常に一緒に考えてもらえる相手いるという安心感が
   あるだけで、ほとんどの人は自分自身で
   歩き出してくれます。
   オーナー料理人さんは、もともと人の意見などあて
   にはしていない人たちです。
 
 
大石さんは日常の料理づくりのほかに、お客様の来店数をアップさせるために
やらなければならないことが山積みになっているようでした。
毎日がとても短く感じられる日々を送っていました。
 
しかし、何をしたらよいかわからないという以前のような霧の中をさまよっている
感じではなく、しっかりとした目標を持ち、それに向かう道もわかっているスッキリ
とした毎日でした。
 
でも大石さんが企画したすべての方策が成功したわけではありません。
どちらかといえば、不成功の企画の方が多かったようです。
でも、不成功を失敗と考えるのではなく、“成功しないことがわかった”という
成果に結び付けられるような考え方
に変わってきたのです。
 
その間の相談件数は尋常ではありませんでした。
ほとんど毎日といってよいほど電話がかかってきました。
電話のほとんどは、「・・・ですが、どうですか?」というものです。
  
もちろん、私にも未来の予測はできません。
私の答えはいつも「そうですよね。でご主人はどうします?」というものでした。
それで十分でした。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-085

「たとえば・・・?」
 
「いいえ、今日はやめときましょう。切りがありませんし、すべてを一度にやろう
としても無理が生じてすべが中途半端になる危険があります。またいろいろな戦術には
長所や欠点、向き不向きがありますので、それらを見極めながら、実践していくという
研究を当研究会と一緒にしていただければありがたいです。当会は研究会という名称を
使用しているのはこのようなことからです」
 
「わかりました。これから一緒にいろいろと研究させてもらいたいと思います。
よろしくお願いいたします」
 
 
「こちらこそよろしくお願いいたします。今日はこの辺で失礼しますが、今から
2~3ヶ月経ったら、今一度時間を作ってください」
 
「ええ、いつでも作れますけど、他に何か?」
 
「はい、実は当研究会がご主人お伝えしたいことは、繁盛店づくりのことだけでは
ないのです。それはほんの一部。もっとご主人にとって重大なことがあるのです」
 
「えぇぇ? 店の繁盛よりも大事なものですか・・・? それって何ですか?」
 
「いえいえ、そんなことは言っていませんよ。お店の繁盛は最も大切なことです。
でも、ご主人、たとえお店が繁盛して儲かるようになったとしても、それだけじゃ
ダメなんです。まあ、それはこの次の話としましょう」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-084

「ご心配はもっともです。“ニューズレター”を作成するには、慣れるまでとても
時間がかかります。そして郵送費用もかかります。そしてそこまでして効果がなかった
としたら泣いちゃいますものね。残念ですが、飲食業界においての効果というものを
判断する資料はありません。雑誌などには『ニューズレターを活用して繁盛した』
なんて記事が書かれているとは思いますが、本当に信じられるかどうかは疑問です。
私は、やらないよりはやったほうがよいかもしれない、しかしそのコスト分の収益を
考えると手放しでの推薦はしかねます」
 
「ほう、そんなものですか? では、やらなくてもいいかなぁ?」
 
「でも、メリットはあります。先ほど『お客様は忘れやすい』ということを言いました
が、それは真実です。“ニューズレター”の配信によるコミュニケーション活動は、
ご主人のお店を思い出してもらうためなのですが、思い出してもらうときに一緒に、
イベントのご案内をすることができます」
 
「それなら、案内だけをすればいいのでは・・・?」
 
「そうと考えやすいのですが・・・。でも本来、人間は売り込まれるのが嫌い
です。ですから、ご主人から届けられる郵送物がいつもご案内という売り込みで
あるならば、初めは開封するもののいずれ開封もしないでゴミ箱行き、といった
ことになる可能性があるのです」
 
「おぉぉ、そうかもしれませんね。私の家にもそれらしき郵便が来ますけど、
ほとんどが開けずにゴミ箱ですねものね」
 
「そうだと思います。“ニューズレター”の発刊はそのゴミ箱行きの確率を低く
させる効果はあると思います。そのために、“ニューズレター”の内容には
売り込みのような表現は禁物
なのですがね」
 
「ほんとうにそうなのですか?」
 
「あくまでも確率の程度です。絶対という根拠はありません。もちろん“ニューズ
レター”の出来不出来によっても違いは出てくると思います。ですから、これは
戦術のひとつであると考えてください。既存客を誘い出す戦術はこれだけではない
はずです」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-083

「ええ? それはお店でのサービスを強化していく、ということでするのでは・・・?」
 
「それはそれです。それだけでお客様をリピートさせることは困難です。以前にも
お話したように、お客様の頭の中はいろいろな事柄で一杯です。とても一飲食店の記憶
など入る余地はありません。一度来店したときの料理やサービスがいくら良かったと
しても、3日も経てばすっかりと忘れられてしまいます」
 
「ええ、そう言われてみればその通りだと思います。では、どうすればいいのですか?」
 
 
   一度来店したお客様の背中を押して
   リピートを促す対策も大事な仕事です。
   それにはお客様とのコミュニケーションが一番です。
   そして、それに対する費用は新規のお客様を
   創るよりも安あがりです。
 
 
「お客様と定期的にコミュニケーションをとることを実施していきます。しかもお店
の中以外にね・・・」
 
「と言いますと・・・」
 
「“ニューズレター” という言葉を聴いたことがありますか? お客様に定期的に
発刊する印刷物のことです」
 
「あっ! ええ、よく経営の専門雑誌で見かけたことがあります。でも何のことだか
わかりませんでしたけど・・・」
 
「そうですね、無理ありません。この“ニューズレター”をご主人のお店でも作成して、
毎月とか、隔月とかというように定期的に既存のお客様の住所に郵送するという方法も
あります」
 
「ますます、やることが多くなってきましたね。やり切れるか心配になってきました。
それでその“ニューズレター”にはどのようなことを掲載していくのですか? 
それと、これを一番に聞きたいのですが、それをやって本当に効果はあるのですか?」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-082

「よろしくお願いします。今まで料理さえおいしいものを作っていればいいと
思っていました。お客様がお帰りになるとき、『おいしかったよ』と言ってもらえる
ので、お客様はおいしい料理を求めている、それじゃもっとおいしいものを一生懸命
考えようとしてきました。でもそれは間違いだったのですね」
 
「ええっ! ご主人。それは間違ってはいませんよ。それはそれで正しい考えです。
もっともっと努力してください。でも、料理人であればそれはどなたでも考えている
ことです。この街に2000人の料理人さんがいれば皆さん同じことを考えています。
『もっともっとおいしい料理を・・』ってね。それは考えてみればとてつもなく激しい
競争だと思いますよ。その競争の中で飛びぬけて世間の支持をいただくということは、
改めて考えてみると不可能に近いことじゃありませんか? ですから、ご主人はもう
1つオリジナルなサービスという武器を使って勝負をかけていって欲しい
のです。
サービスという武器にはいろいろあります。どの武器を創り出し使うかはご主人次第
です。それが個性というものです。その個性を求めてお客様が集まります
そんなお店になってくれることを私は望んでいます」
 
「そうでした、ありがとうございます。何か目の前のモヤモヤがすっきりしたような
気がします。まだまだ『これだ!』というものはありませんが、銀行の返済が再開する
までに何とかしたいと思っていますし、またできそうな気がしてきました」
 
「そうですか、よかったです。では、広告のこと、またその他のことでわからないこと
がありましたら、いつでもFAXかメールで質問してください。電話ではすぐに出れ
ないことがあるかもしれません。それと、毎月当会より、いろいろと有益な情報を
レポートにしてお届けします。それにも目を通してくださいね。これも繁盛店への勉強
だと思ってください。それから、もうこれからご主人はひとりぼっちではありませんよ。いつでも相談できる参謀がいると思ってがんばってください」
 
「わかりました。どんどん相談させてもらいます」
 
「ではご主人、次の話なのですが、今まで話をしてきたことは、新規のお客様を
獲得するための広告というものでした。しかし、集客とは何も新規のお客様獲得
するだけではありません。集客の中には、既存のお客様に再度来店してもらえる
ようなお知らせを発信し、リピート率を上げていく
という方法もあるのです」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-081

「そういうことですね。広告を戦略と考えるのであれば、LTVというキーワードは
欠かせません。そしてまずはLTVの数値を上げる店づくりから始めなければなら
ないことがお分かりいただけたと思います。それをしなければいくら広告をして新規の
お客様を獲得したとしても、穴の開いたバケツと同じで、繁盛店になることは絶対に
できないと考えます」
 
「そう言われてみればそうですね」
 
    
   広告の真の意味は、問題を抱えている
   お客様に対して問題の解決を提案することです。
   反応がよかったということは、その提案が必要な
   お客様の手元に届いたからです。
 
 
「本当は、広告なんてやってもらいたくはありません。お金がかかりますからね。
でも、世の中にはご主人のお店を知らないことで、食生活やいろいろなことで
“不便”をしている方たちもたくさんいらっしゃいます。広告とはそんな方たちの
不便と言いますか、抱えている問題に対して解決策を提案することが役目なのです」
 
「ほう、解決策をねぇ?」
 
「そうです。広告は広告主の利益のためにするという“自利”の考えではいけません。
広告は商品を知らない人たちに対して、それを知ることで得られる利益のためにする
“他利”を考えて行う活動です。すべてはお客様の利益のため、ということですね」
 
「へぇー! 自分のために広告をするのではないですか?」
 
「ええ、確かに結果的には自分のためなのですが、心根は“他利”を考えるように
してください。それでないと、いい広告のキャッチコピーが考えられなくなります。
よろしいですかもう一度言いますよ。広告は“それを見た人の問題を解決するための
提案”なのです」
 
「なにか、わかったような、わからないような・・・」
 
「そうでしょうね。でも大丈夫。これからが勉強ですから。その勉強の環境と材料を
提供するのが『行列ができる店づくり研究会』の役目です。でも、勉強するのも
実践するのもご主人の自主性です。私がご主人に経営のすべてを指示するわけでは
ありません。なにせ当会は研究会ですからね。会員皆さんが自ら研究する会なのです。
明日の繁盛店を目指してね・・・」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-080

先ほどのテストで3名では採算があわないと判断してしまったチラシも複数月の期間で
判断するならば、十分に使えるものになる場合もあるのです。
 
集客のための広告もこのようなLTVという考え方を加えることにより、より戦略的な
ものにすることができるようになります。
実際、飲食店は絶えず新規のお客様だけを求めて営業をしていくとしたら、とても
成り立ちません。
 
いかに多くのリピーター顧客に支えられているのかが繁盛店のひとつの条件の1つです。
たった一人のお客様が、1年間に10万円を使ってくれたという話も稀ではありません。
  
LTVの数値は、言い換えれば、お客様の満足度を数値で表しているものです。
高ければ高いほど、お客様のリピート率が高く、それはお客様の中で満足を感じて
くれている人が多いということになります。
 
広告を実施するにあたってLTVという考え方を加味するならば、顧客のリピート率が
高いお店ほど広告の効率はよくなります。

 
極端な話が、10万円のコストでたった1人しか新規のお客様を獲得できなかった
としても、そのたった1人のお客様が1年間に何度もリピートしてくれて、20万円を
使ってくれたとするならば、その広告を成果が出ない広告とは決めつけられません。
 
「広告による集客の前にやるべきことがある」という本冊子のテーマの理由も
ここにあるわけです。
広告をうっていくらお客様を集めたとしても、お店自身にお客様をリピートさせる力が
なければお客様は減る一方です。
いわゆる、穴の開いている器に水を注いでいるようなものです。
 
 
「ほう、広告をするにもいろいろな知識がいるものですね。これはしっかりと勉強
しておかなければいけませんね」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-079

先ほどの例を使えば、9000枚のチラシ広告を配布して38名のお客様が来店してくれて、
そのうちの10名がリピートしたとするならば、チラシ広告の成果はより大きなもので
あるはずと考えられるのです。
 
LTVは一定の期間を設定して、その期間の中でのお客様一人当たりの売上金、または
利益金額で表します。
 
しかし実際には、お客様ごとにリピートの回数はまちまちであり、ある一定の期間、
たとえば3ヶ月間という期間で見てみると、1回しか来店していないお客様と数回来店
しているお客様が混在しています。
ですから、LTVを数字で表そうとすれば、それは平均をしたものになるはずです。
 
具体的な例で示してみます。
あるお店が3ヶ月間で360万円の売上を延べ人数1,200人のお客様で達成したとします。
延べ1,200人のお客様の中には2回以上来店したいわゆるリピート客も含まれています。
 
お客様のリピートを加味して再計算してみると、実は正味800人のお客様で360万円を
達成したということがわかりました。
 
 粗利益率が70%という条件の下で粗利益のLTVを算出してみると、
 360万円×0.7÷800人=3,150円
 
この3150円がこのお店の3ヶ月間のお客様一人当たりの平均粗利益LTVということになります。
 
この試算では3ヶ月間を対象としましたが、これを1年間にすれば、この数値はもっと
大きな数値にかるかもしれません。
 
では、この数値が広告コストに対して何を意味しているのか、ということです。
 
この数値が教えてくれることは、LTVを考えない場合の広告効果で粗利益が2,800円
から、LTVを考えた場合には3ヶ月間という期間では3150円と12%ほど高くなっていると
いうことです。
 
単純に考えるならば、チラシ広告の成果の判断基準のハードルを低く設定できるように
なるということになります。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-078

チラシ広告のコストは作製代と配布料を合わせて1枚あたり10円がかかると仮定します。
広告予算の10万円のうちの1万円をテストに当てます。
本番の広告予算は残りの9万円です。
9万円で実行できるチラシ広告は9,000枚ということになります。
 
この結果9,000枚のチラシ広告を配布して38名のお客様を来店させられるかどうかの
判断を広告テストで行うということです。
9,000枚のうちで38名ですから、広告の成功確率は230枚に1人という計算になります。
 
この確率をテスト予算1万円に計算しなおせば、1,000枚配布して5人が来店して
くれるチラシでなければいけないということになります。
 
もし1000枚のテストチラシが3名だったとすれば、単純計算によれば27人のお客様に
しか来店してもらえない、その利益は75,600円でしかなく、10万円の広告を実施して
75,600円の利益しか実現できないということになってしまいます。
 
つまり、広告をして損をしたという判断です。
これがLTVを考えない広告の判断基準です。
 
 
では、次にLTVという考え方を加えてみます。
 
LTVとは顧客生涯価値。
顧客生涯価値とは、一人のお客様が一生の間にどれだけの価値をお店に与えてくるのか
というお客様を個別にして集計した売上金額の数字を作ることで把握することができます。
日計や月計、年計といった売上金額の数字ではなく、一人一人のお客様の売上履歴を集計
し平均していく考え方をします。
 
お客様の中には、一度来店して気に入ってもらえればそれから何回かリピート来店して
もらえる人も少なからずいます。
お店としてはお客様のリピートに際しての広告コストはかかりませんので、お客様が
お店に与えてくれる粗利益はそのまま残ることと考えていきます。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-077

必ずテストという行程を実施しながら進んでいくのがプロの仕事です。
もし、一度に大量の印刷物を勧める人がいたとしたら、その人は広告のプロではなく
営業のプロだと思ってください。
 
広告は、常に“テスト”が先にありき、です。
いきなり多額な広告コストをかけていくのは危険きわまりない行為と言えます。
では、そのテストにおいて、善し悪しの判断基準である数値をどこから導きだすのか、です。
 
この大事な考え方の根底にあるものが、もう1つのキーワードであった“LTV”という
ものです。
 
 
まず、LTVというものを考えない時点でのテスト広告の判断を見てみましょう。
 
この場合の判断は、広告をしたことによる効果でどれだけのお客様が来店してくれ、
その結果どれだけの粗利益が出たのかということになります。
つまり、広告コスト対粗利益という見方です。
 
具体的に考えて行きます。
 
あるお店では集客のためにチラシ広告をやろうと考え、そのコストとして10万円の
お金を工面しました。
でも、一度にすべてのコストを投下するのではなく、1万円でチラシ広告のテストを
することにします。
 
広告費に10万円かけるということは、それに見合うだけの粗利益が上がらなければ
意味ありません。
粗利益率70%のお店が10万円以上の粗利益を計上するためには15万円以上の売上を
確保する必要があります。
お店の現時点での客単価は平均すると4,000円です。
 
これから算出すると、38名のお客様が4,000円使っていただければペイできるという
計算になります。
そこで、今回のチラシ広告が38名以上のお客様を来店させることができるものなのか
どうかをテストすることにします。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-076

この条件が多種にわたるところがチラシ広告の難しいところであり、その結果と原因
との因果関係を見つけ出すには、大変な経験と努力が必要になります。
ですから、こんな広告をすればお客様が来店するという絶対的な法則などどこにも
ない
のです。
 
私が“繁盛=集客=広告”という安易な考えに“ちょっと待って!”と言う理由は
ここにあります。
そして“テスト”という考えの根拠もここにあります。
 
テストとは、具体的には広告のために準備したお金の一部を使い作成したチラシ広告の
反応を見るために限定した狭い地域に、いろいろな条件を変えながら配布をします。
そしてその結果を数値としてデータ化し、一定以上の数値を上回る条件のチラシを
採用して、本格的な広告を行います。
 
当然、数値が低い結果しか得られなかったチラシは再考するか廃止にします。
それ以上のムダなお金はかけないという考え方です。
 
以前に、会員さんである回転すし屋さんに伺ったときに、レジの下に出来上がった
広告チラシが山になって積み重なっているのを見かけました。
話を聞いたところ、チラシ広告をするために広告業者さんに頼んで作成してもらった
ものでした。
 
しかし、自らがポスティングをし始めたところ、500枚まいてもまったく反応がなかっ
たために嫌になってしまってそのままにしてあるということでした。
チラシの制作費はデザイン料を含めて30万円ほどだったそうです。
その30万円は、レジの下で捨てられるのを待っているという状況でした。
 
広告のプロと言われている人は、テストを何度も何度も経験してきており、そこに
ある程度の自分なりの因果関係を見つけ出しているものです。
ですから、適正なアドバイスをしてもらえるときもあります。
 
でも、それは絶対なものではなく、本物のプロであれば、いきなり大量の印刷物を
用意させることはまずありません。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-075

「そうなのですか、じぁあ、チラシ広告をやってもムダということですね」
  
「いいえ、そういう結論を出すには早すぎます。集客にチラシ広告という手段を
使うのであれば、知っておくべきキーワードが2つあります。ひとつは“テスト”
もう1つは“顧客生涯価値”です。顧客生涯価値は英語で“ライフタイム・バリュー”
という言葉で言っていますので、これからはその頭文字をとって“LTV”と略して
お話しします」
 
 
チラシのような広告宣伝をしてお客様を集めるという活動で心得ておいてもらいたい
ことは、“誰も未来のことはわからない”という事実です。
たとえばチラシの原稿を見て、そのチラシが、反応がとれるチラシなのか反応がとれ
ないチラシなのかを判断できる人など誰もいないと私は思っています。
 
世間にはチラシ広告に詳しい人がいるようで、そのような人のところへ自分のチラシを
持ち込んで「どうですか?」と診断をしてもらえるようなのですが、本当に正しい診断
をしてもらえるのか、私は疑問に思っています。
 
きっと広告を深く勉強してきた達人とも言える人であれば、診断可能なことだろうと
思いますが、私の考え方の基本は“チラシ広告はやってみなければわからない”
ということです。
 
今まで、会員さんたちのお店で、「これはいいな!」と思ったチラシ広告でも反応が
なかったり、「こんなのダメだ!」と思ったチラシ広告が大当たりしたという経験を
重ねていると、どうしてもこんな考えになってしまいますし、またこの考えの方が
正しいと確信するようになってきました。
 
そして、“やってみなければわからない”の延長上に出てくるのが“テスト”
という考え方です。
つまり、予定した広告コストを一度にすべて使い切ってしまうのではなく、その一部の
コストで、まずはチラシ広告の反応をテストするというものです。
そして、その結果の善し悪しによってその広告を続行するか中止するかを決定していきます。
 
実は、広告の反応はいろいろな要件によってまちまちになります。
たとえばチラシ広告であれば、紙面のキャッチコピー、写真、そして用紙の色や
サイズ、さらに配布日時や配布日の競争チラシ広告の種類と量などなど、いろいろな
条件によって反応が出るか出ないかの差が出てきます。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-074

「そうでしたよね。では広告による利益というものをどのように解釈するかという
ことですが、ご主人はどのように考えますか?」
 
 
   広告には費用がかかります。広告による
   利益が費用を上回らなければ、広告はやり損に
   なってしまいます。
   では、損をしない方法はどうすればいいのでしょう?
   その答えを導くキーワードが2つあります
 
 
「そうですね、たとえばチラシ広告を打つとして、その広告に3万円もコストが
かかれば、その広告によって3万円以上の利益が出るだけの売上・・・、と言うことは、
現在の原価率が32%だから・・・、4万5千円以上の売上があればいいということです。
それで、それを現在の客単価で割ると・・・、15人のお客様が来てくれればトントンと
いうことになりますけど・・・」
 
「わかりました。では、15人以下だとしたら、その広告はどうされますか?」
 
「ええ、その広告は失敗ということで、次を考えます」
 
「では、次を考えるとして、今度は15人を上回る結果を出せるチラシはどのように
改善したらよいと思いますか?」
 
「え・・・・、え・・・、すみません、わかりません。広告の勉強はしていません
ので・・・、これからは広告の本でも読むようにして、しっかり勉強しなくてはいけ
ないですよね」
 
「はい、勉強は大切です。でも、ご主人、いくら勉強したとしても、どんなチラシ
広告が15人以上のお客様を来店させるという未来のことを正確に判断することは絶対
にできませんよ」
 
「ええ、そうなのですか? じゃあ、広告のプロって人はどうしているのですか?」
 
「そりゃ、広告のプロに頼めばそうなる可能性は少しは高くなると思いますが、
その分コストもあがりますよね。そのコストを上回る利益を確保できるかどうかは誰も
保証してくれません」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-073

専門的に言えば、
お店の安定収益力を目的とするには、『損益分岐点比率』『総資本経常利益率』
といった数値。
商品力を目的とするには、『限界利益率』『売上高増加率』といった数値。
資本力を目的とするには、『自己資本比率』『自己資本増加率』『流動比率』。
人材力を目的とするには、『一人当たり年間経常利益』『一人当たり月間限界利益』
といったそれぞれの数値を計測し、その向上策を考えていきます。
 
しかし、このような難しい表現の数値は、目の前に並べられても理解することは
困難ですので、そのお店に合った具体的なわかりやすい数値を設定することにしています。
 
とにかく、それぞれのお店の形態によって指針とすべき数値情報は変わるものだと
考えてください。
 
 
「ご主人、あれから4ヶ月経って、お店もだいぶよくなってきましたね。それに何を
すればお客様が来店してくれるということが、ボーっとでもわかると言うか、感じ
られるようになってきましたよね」
 
「ええ、まだまだとは思いますが、それでも以前とはまったく意識が違います」
 
「そうですね、では、いよいよ広告による集客という作業を考えていきましよう」
 
「えっ? ・・ってことはチラシ広告をするということですか?」
 
「はい。でもチラシ広告だけが集客活動ではありません。集客とは既存のお客様に
対しても、まだこのお店を知らないお客様に対してもするものです。ただ、以前にも
申し上げたと思うのですが、広告活動のマイナス点はコストと時間がかかるということです」
 
「はい、その通りでした」
 
「ですから、コストをかけたらそれに見合うメリットがなければいけませんよね。
メリットというものをここでは利益ということにしますと、コストをかけたらその分の
利益が確保できなければ意味はないということです。しかも予定した期間に、です」
 
「ほんとうにそのとおりです。それで以前、苦労してしまいました」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-072

「それでいいと思います。あまり期限にこだわってもトラブルの元になりますからね。
今回のサービス券の目的はこのお店が一度来店してくれたお客様がリピートしてもら
えるだけの価値があるかどうかを計測するため
ですからね」
 
「はい、私もそう思っています」
 
「この数値をみて、ご主人はどう思われます」
 
「はい、正直わかりません。良いのでしょうか? 悪いのでしょうか?」
 
「良くも悪くもありません。大事なのは、お客様側から見た現在のお店の価値が
この数値に表れているということを認識すること
です。ですから、あとはこの数値を
上げるために何を企画したら良いのかを考え、そしてどんどん実践していくということ
です。このデータは結果の善し悪しを判断するのではなく、現在のお店の位置づけと
方向性を確認するためのものですよ。目標は?・・・・そうですね、新規さん50%、
既存さん80%としましょう」
 
 
   今現在の位置がわかっているからこそ、
   目標を立てることができるのです。
   目標ばかりを立てたとしても現在値を把握
   していなければ、何をどれだけやったらよいか
   さえわかりません。
 
 
このように売上に関係するある数値情報を取り出し、目標値の設定と現在値を確認し、
さまざまな方策を考え実施していく経営を“羅針盤経営”と言っています。
 
羅針盤経営と言うとすぐに売上金額を数値情報として考えてしまう人が多いのですが、
売上とはいろいろな要素によって構成されているため、売上数値を目標にしてしまうと
目標値への方策が絞り込めなくなってしまいます。
 
今回、大石さんの場合にはお客様のリピート率1点に絞り込んで、その数値を向上
させる方策を考えることにしたのですが、もちろん、この対象とする数値はすべての
お店に適応するわけではありません。
そのお店なりの数値目標を見つけてその数値を管理していくことになります。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-071

   一生懸命にやった仕事には必ずその心が
   反映されていきます。
   1つの手抜きは全体の手抜きを感じさせますし、
   反対に1つの懸命さは全体の信頼感をつくることができます。
   「メニュー表が薄汚れているお店の料理は旨くない」
   これはお客様の常識です。
 
 
「ほう! ますます驚いてしまう話ですね。でも、もっともこのメニュー表に対しての
ご主人の気持ちの入れようはものすごかったですものね。私も出来上がったメニュー表
を見て、何かご主人の料理人としての魂が乗り移っているのではないかと感じました」
 
「ええ、それだけ苦労しましたから・・・。あの作業をまた2ヵ月後のメニュー改正の時
にはしなくてはならないと思うと『正直大変だな』って思います。でも、それもお客様
が喜んで見てくれる姿を思い描けばやりがいはありますよね」
 
「そうそう、そういう気持ちが大切ですよね。いい言葉です『お客様が喜んでくれる』
というのはね」
 
「はい、今ではそれが何よりの楽しみになってきました」
 
「よかったですね。それで肝心の売上はどうでしょうか?」
 
「はい、おかげで140%にまでなってきました」
 
「なるほど。では、お客様のリピート率はどのぐらいになっていますか?」
 
「はい、新規のお客様と今までのお客様と分けてデータを取っています。新規の場合は
30%、今までのお客様は65%という数値です。これはサービス券の有効期限を1ヶ月に
してありますので、新規のお客様にはないのですが、今までのお客様の中には期限切れ
のサービス券をお持ちになる人もいまして、それも有効にしてしまってカウントしています」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-070

料理店は料理の献立をいったんメニュー表に載せてしまったら、その料理に関する
食材を仕入れて常備しておかなければなりません。
ところが、その料理が食材を仕入れたその日に売れるかどうかは不確定です。
おまかせ料理の完全予約制をとっているお店は別として、メニュー表に載せてある
料理が売れなければ、仕入れた食材はロスになってしまう場合もあります。
 
その食材が冷凍食品である場合はロスを少なくできますが、生鮮品の場合には鮮度が
落ち翌日にはもう利用できなくなってしまうこともあります。
食材の廃棄を防ぐために、店側としてはその食材を『お通し』などのいろいろな料理に
利用するのですが、それをもっても初めの原価率を維持することは不可能です。
 
この仕入ロスをいかに少なくするか、というのが料理人の腕というものなのですが、
どんなに腕の良い料理人であっても、未来の不確定な販売予想をピッタリと当てる
ことは不可能
です。
大石さんが言われたことは、この不確定をメニユー表の中で料理の価値をお客様に
伝える活動によって予測した数の料理売り切れる確率が高くなった、ということです。
 
このような効果は、飲食店の利益は単に来店するお客様の数だけではないことを
意味しています。
仕入管理や在庫管理、そして販売予測管理を徹底していくことで原価率を下げることが
できるのです。
原価率が下がれば、それは即利益につながってきます。
 
 
「はい、思わぬ効果でした。それとメニュー表を変えたことで、思ってもみない出来事
が起きたのですよ」
 
「ほう、それは何ですか?」
 
「ええ、実は、このメニューを見て『ここで働かせてくれ』という調理師見習いが
来たのです」
 
「ええ! それは想定外でしたね」
 
「はい、思ってもみませんでした。実はその子は以前からたまに当店を利用してくれて
いたらしいのです。現在は他のお店で修行しているのですが、私がつくったメニュー表
を見て『ここのマスターから料理を習いたい』と思ったそうです。それだけメニュー表
にインパクトがあったのですね」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-069

   新規に獲得したお客様を逃さない仕組みが
   お店にできたなら、いよいよ広告での集客活動です。
   でも、広告ほど当たりはずれがあるものはありませんし、
   当たりはずれとはいったい何を基準に判断するのでしょうか?
 
 
そして、さらに1ヶ月が過ぎました。
オーナーさんと話し合いを始めてから4ヶ月目に入ろうとしていました。
 
「ところでご主人、肝心なお店の売上ですけど、どうですか? 変化が出てきま
したか?」
 
「はい、あれ以来話してもらったことをいろいろと実践したおかげでお店の雰囲気が
すごく良くなったように感じます。お客様にメニュー表をほめられることも多いですし、
客単価も少し上がってくれています。それと、メニュー表を変えたおかげで原価率も
以前より良くなっています。きっと原料のロスが少なくなっていると思います。
こちらが売りたい料理をメニュー表でお客様に伝えることでコントロールできるように
なってきたせいですかね」
 
「ほう、それは思わぬ効果でしたね」
 
飲食店の損益計算書を見てみると原価率がお店の形態によってさまざまです。
原価率というものは、業態や立地そしてサービス体制などの要因によって料理や
ドリンクの価格が違いますので、いろいろになるのは当たり前の話です。
でも仮に、お店側が原価率を30%になるように料理の価格をつけたとしても、実際には
それよりも高い原価率になってしまうことがほとんどです。
その原因が予定仕入による廃棄ロスにあります。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-068

この冊子を読んで誤解してしまった人もいました。
“納入業者は自分の店に協力して当たり前だ”と思い込んでしまったのです。
そんな内容ではなかったはずなのに、どうしてそんな考えになったのかは今でもわかりません。
  
また、納入業者さんのすべてに対して協力のお願いに出かけてしまった人もいました。
そして、見事断られました。
「取引先からそんなことを言われたのは初めてだ」と言われたそうです。
そこは、全国に支店を持っている食品会社でした。
そして、支店長とはその時が初対面だったということです。
初対面でいきなり「私のお店に協力してください」と言っても、こころよい返事を期待
する方がおかしいのです。
ちょっと考えればわかるのですが、思い込んだら一直線だったのかもしれません。
 
多少の失敗はあったのですが、会員さんが仕入れている大方の業者さんは協力の約束を
してくれたようでした。
特に酒屋さんが熱心に動いてくれたという話を聞かせていただきました。
 
広告のようにコストがかかることはありませんのでやってみることをお勧めします。
くれぐれも“人にモノを頼むときには下手に出る”ということを忘れないように
してください。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-067

「ええ、そうですよね」
 
「しかし、ここは大切ですからよく理解してもらいたいのですが・・・。ご主人、
業者さんと接するときに“こちらが買っている”という意識は捨ててください。
業者さんも大切なお客様です。ご主人が仕入れに出向くときも“営業”に行くという
意識をもってください」
 
「営業・・・ですか?」
 
「はい、理解しにくいとは思います。営業といっても料理を売り込みに行くのでは
ありません。ご主人の人間性を売り込みに行くのです。まずは、相手に対して日ごろの
取引に対してのお礼の言葉を述べてください。それから、ご主人がいつもどんな考えで
お店に立っているか、将来はどんな店にしていきたいと思っているか、などのことを
それとなく話すようするのです。はじめは世間話からでもいいです。相手はいろいろな
話の中から、ご主人の人柄を理解してくれます。そして同時に親しみも感じてくれます。
これが“営業”というものです。『買ってくれ!』と頼みに行くばかりが営業では
ありません」
 
「はぁ、今まで材料を買うだけの用事だけでしたので、そんな会話したことはありません
でしたし、ましてやお礼の言葉なんてかけたこともありませんでした。こっちがお客だと
思っていましたので・・」
 
「そうだと思います。しかし、業者さんは自分のお客からお礼を言われるなんて思っても
いませんからびっくりされると思います。そしてそのことによってご主人に好意をもってくれるきっかけになればしめたものです。業者さん自身がお客様になって来店してくれるようになりますし、また口コミなどもこの業者さんを通して広がっていきます。まさしく、偉大なスピカーになってくれます。何せ、業者さんの付き合いの広さはご主人の何倍もありますからね」
 
「わかりました。では具体的にどうすればいいのですか?」
 
「まずは、この冊子を読んで、ここに書かれていることを十分理解してください。
そうすれば。ご主人が業者さんを見る目が変わってきます。大事なのは、ご主人自身が
変わることです。それからのことはケース・バイ・ケース、出たとこ勝負です。失敗は
つきものです。しかし業者さんとの協力関係をつくるということでの失敗は、意外に
すぐに修復できるものですよ」
 
「はい、ではこの冊子を良く読んでやってみます」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-066

「その通り。ですからその業者さんに売上を大きくするための協力をお願いするのです。
しかし、それは強制的に食事券を販売するなんて業者さんを困らせる方法を使っては
ダメです。もっと自然に業者さんが協力したくなるような方策を考えるのです。
それに業者さんとの協力関係から得られるメリットはこれだけではありません。
詳しくはこの冊子に書いてありますので、後でゆっくりと読んで理解してください」
 
 
当研究会では、別に「飲食店が納入業者と上手に付き合って繁盛する秘策」という
小冊子を発行しています。
その冊子は、私が過去30年間、飲食店への納入業者として実際に飲食店を支援してきた
経験をもとに、仕入業者を活用して飲食店の繁盛させる一つの手段を解説したものです。
 
 
「ところで、ご主人のお店は料理材料の仕入れにはどのような業者さんを使っています
か? つまり、専門店なのか量販店なのかということですが・・・」
 
「そういうことであれば、仕入れの大半が専門店からです。電話やFAXで前日に注文して
おけば配達してもらえますので・・・。でも注文し忘れたときには近くのスーパーも
利用しています」
 
「結構です。業者さんに協力してもらうことを考えるには、相手が専門店のようが有利
です。単に価格的なメリットだけを重視して現金問屋やスパーマーケットで購入しても、
その業者が売上に協力してもらえることはまずありえません。また、専門店は量販店に
比べて取扱商品に対する知識が深く、生鮮食品などの価格変動に対しての予測知識も
豊富です。野菜や魚といった天候によっての価格変動が大きい素材に関しては、年間を
平均すると専門店の方がずっとお得だったという結果も出ています」
 
「そうですよね」
 
「ですから、専門業者さんは飲食店にとっては隠れていた宝のような存在とも言えます。
この宝を活かさない手はありませんよね。しかし、一口に業者と言ってもいろいろです。ご主人とのお付き合いも長いところや短いところもあります。また、業者さんが個人経営のところと、全国チェーンの一営業所との違いもあります。ですから、すべての業者さんと、こちらにとって都合のよい関係ができるとは言い切れません」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-065

「ええ、それは当たり前ですよ、それがどうしました?」
 
「一言で言ってしまえば、“業者さんもお客様のうち”ということです。これが
物販業界ではそうはいきません。問屋と小売店では取扱商品は同じです。すべて
そうとは言いませんが問屋が小売店で買い物をするということはありえません。
たとえば、電気製品の卸問屋さんが自分の取り扱い製品を得意先の小売店から購入
することなどめったにありませんよね。しかし飲食業界では、問屋である魚屋さんも
肉屋さんも小売店である料理店に来店することは考えられます」
 
「それは、そのとおりです、で、それがどうしたのですか?」
 
「ご主人のお店には、現在、仕入業者さんがよく来店してくれていますか? また、
お客様をご紹介してもらったことってありますか?」
 
「ええ、開店当時は何軒かの業者が来てくれました。でも、今ではほとんど来ない
ですね。それと紹介は本当にたまに、です。それも他で断られたのでしょうか、
向こうから頼まれたという程度ですね」
 
「それは大変な損をしていますよ、ご主人。どうしてもっと仕入れ業者さんに協力
してもらわないのですか? ご主人の方から頼めばきっともっと売上に協力してくれる
と思いますよ」
 
「そうですか? 本当に・・・? 業者がですかぁ・・・?」
 
 
   あなたのお店の納入業者さんは強力なサポータです。
   あなたのお店の繁盛を一番期待しているのは、
   お客様ではなく納入業者さんです。
   ならば、あなたのお店の繁盛に手を貸さないことは
   ありません
 
 
「だって、仕入業者さんというのはお店の利害関係者の中でも、最も身近な存在です
よね。たぶん毎日の取引だと思いますから顔も毎日合わせていますよね。そして仕入
業者さんが一番望んでいるのは、このお店が繁盛することなのですよ。そうすれば自分
のところからの仕入も多くなりますから・・・」
 
「うん そりゃ、肉屋さんや魚屋さん、そして八百屋さん・・・、それに酒屋さんも
きっとウチが繁盛してもらいたいと思っているはずですね。そのほうがあちらも儲かり
ますからね」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-064

「経営資源」とはこの文に示されているとおり人材、商品、資金、営業時間、
調理知識といった経営していくために必要な資源のことです。
「付加価値」とは、言い換えれば営業した結果売られる利益のことです。
「利害関係者」とは、金融機関、仕入業者、大家、そして肝心なお客様といったお店に
金銭的に関係するさまざまな人たちをさします。
以降は、お店に金銭的に関係する人たちから存在してほしいという気持ちを持って
もらえるような組織をつくり、それを存続させるための価値を作り上げる、ということ
を成し遂げる人が経営者だと説いているわけです。
 
 整理してみると
1. “自分の料理をお客様に提案したい” という考えのもとに、人材やお金、店舗や
調理技術、そして時間と空間などを上手に使って適正な利益を出す。
2. そして、その事業にお客様だけでなく金銭的に関っているさまざまな人たちに
「なくてはならない店」として、長くあり続ける。

 ということでしょう。
 
 
難しい話になってしまいましたが、ここで気がついてもらいたかったことは、1項目に
ついてはほとんどのオーナー料理人さんたちにも理解を得られているものの、2項目に
ついては、残念ながら、あまり関心をもたれていないということです。
 
そして、ここに料理人と経営者の決定的な違いが存在してしまい、経営がうまくでき
ない原因の主な原因もこのあたりにあるというのが私の考えです。
 
では、話を本題に移します。
 
 
「ご主人、今日はひとつ、納入業者さんとの密接な協力関係をつくることによって、
売上を伸ばす可能性があることをお伝えしようと思っています」
 
「業者との関係で、売上を・・・、ですか?」
 
「はい、そうです。私は、飲食店と料理の素材を納入する業者さんとの関係というのは、
通常の物販業界とは違っていると考えています。その根拠は、飲食店は仕入れた食品を
そのまま利益を乗せて販売する物販をしているのではなく、料理というまったく形を
変えた独自の商品に加工しなおして販売していることにあります」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-063

仮に、“経営者”を定義してみようとすると、意外に難しいものです。
 
大企業の経営者のことではなく中小零細企業、そしてここでは飲食店の経営者、
そしてもっと絞り込んで料理人が経営者である場合で考えてみると、“飲食店の経営者
とは店舗を持って自前の料理を提供する人”と定義する人が多いと思います。
 
しかし、料理人さんが自分をこのように定義してしまった瞬間に、実は、経営者として
の視点で見ることから遠ざかってしまうのです。
 
料理人さんが、いきなり自分のお店を持つということはありません。
どこかの料理店で料理づくりの修行をしたり、どこかの料理店の調理場の責任者に
なったりしたあと、自分のお店を開くというケースがほとんどです。
 
オーナー料理人さんがお店を持つ原点は、“自分が創りあげてきた料理のすべてを、
誰の制約も受けず自分のやり方でお客様に提供したい”というところにあると思います。
 
この料理人さん思いはとても大切であり、経営者になるきっかけにはなるのですが、
経営者として存続するためには、経営者としての正しい定義を自分の中に持たなければ
なりません。
 
そこで、ちょっと話を脱線させて、“経営者とは何か”ということを考えてみます。
 
PHP研究所という企業経営の分野でいろいろな研究・教育や書籍などを販売している会社
のある講義の中で、“企業経営とは何か”について述べているところがあります。
参考のために、ご紹介しておきます。
 
「独自の経営哲学」のもとに、
ヒト、モノ、カネ、時間、情報に代表される「経営資源」を、
有効適切なる「経営管理技術」を駆使して「付加価値」を創造し、
「利害関係者」に対して「存在価値」を発揮し、
活力を持った「組織体」として、
永遠に「存続価値」を確立すること。

 
難しい用語ばかりが出できますが、
「独自の経営哲学」とは先ほどのオーナー料理人になる原点の思いと考えることができます。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-062

オペレーションは、きっと飲食店の生涯の課題でもあるわけです。
大変な課題ですが、その課題に立ち向かうことが楽しくなったときが“飲食業のプロ”
としての一歩を踏み出したということではないのかと思っています。
 
 
「ところでご主人、この3ヶ月の間、今までのような宣伝広告という手段を使わない
でも売上を大きくできる方法を具体的な形として提案し、それをひとつひとつ実践
してもらってきたわけです。同時に、売上が4つの要素によってつくられている理論も
理解してもらいました」
 
「はい、料理づくりばかりをしてきた自分には本当に勉強になりました」
 
「それは良かったです。そこで気づいてもらいたいのですが・・・、売上を構成する
公式を見ると、要素ごとの掛け算になっていましたよね? その意味は、売上を
効率的に大きくしていくには、その中の1つの要素だけに着目して伸ばすのではなく、
すべての要素を少しずつ伸ばしていく戦略の方がベターということなのです」
 
「ええ、それはなんとなくわかるようになってきました」
 
 
   売上を大きくするには、ある一つの秘策に
   頼ることではなく、売上を構成するすべての
   要素に対して少しずつ働きかけることです。
   問題はその要素を見つけ出すことができるかどうかです。
 
 
「この考えは、それぞれの個別の要素を伸ばす方法にも言えることです。つまり、
顧客数を増やすには、現在実践している方法しかないわけではありません。そして
来店回数を増やす方法も、料理単価を上げる方法も、注文数量を上げる方法も、
これしかないというような狭い視野で考えてはいけないのです。もっと大きな視野で
自分の周りをよく見て、他業種がやっている方法などからも勉強し、自分のお店に形を
変えて取り入ようとする姿勢を持つようにしてください」
 
「はい。何か、今になってはじめて経営者になったような気がします」
 
「では、その広い視野に立って考えてもらいたいあるひとつの提案があります。
今日はこの話をしたいと思います」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-061

「なるほど、オペレーションは難しいですか? でも、オペレーションという考え方
があることを知っただけでも進歩ということですね。今までは、そんなこと気にも
していなかったですものね・・・。でも、反対に考えれば、今までそれでクレームが
なかったということは、ご主人さんのお客様達はずいぶんと優しい方たちだったと
いうことですね。ほら、ご主人が忙しいときには注文を遠慮していた、ということ
なのかもしれませんからね・・・」
 
「そうですかね? でも、それで売上が伸びないのでは、あまり喜べませんね」
 
「その通りです。でも、初めから深刻にならないで・・・。オペレーション、
言い換えればお店を切り回す要領というものなのですが、そんなにすぐに呑み込める
ものではありませんよ。まずは、店内のお客様の様子をしっかり観察する。そして気が
ついた方法でやってみる。上手くいかなかったと感じたら何が間違っていたかを
つきとめて、次への糧にしていく。オペレーションは意識しながら毎日の積み重ねの
中で熟成されてくるものですよ。これも調理技術の修行と似ているかもしれないですね」
 
 
   オペレーションは日ごろからの積み重ねで
   うまくいくようになってきます。しかし、
   うまくなるためには何度も失敗をして、それを
   貴重な経験にしていかなければならないでしょう。
   でも、今まではその失敗すら気がつかなかった
   わけですから大きな成長といえます。
 
 
オペレーションというものは、知ったからといって次の日からすぐにできるものでは
ありません。
料亭の女将さんにおいても、女将になった日からすぐにできるようになったものでは
ありません。
たくさんの失敗をし、板場からもお客様からも叱られてきた体験を積み重ねて、
だんだんに覚えてきたという話を聞かされてきました。
「若い頃は、くる日もくる日も、『どうしたらもっとうまくいくんだろう』、と夜も
眠れない日々を重ねてきた」と言いっていました。
そして、「この歳になってもまだまだ勉強中だよ」と目のふちに小じわを寄せて
優しそうに笑って話してくれたある女将さんの顔が思い出されます。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-060

飲食店は仕入業者さんにもお客様になって
もらうことができる特殊な職種です。ここに
目を向けない手はありません。
しかも、やり方によって仕入業者さんは、お店の
上得意のお客様になってもらえやすいのです。
その理由は、共存共栄という利害関係があるからです。
 
 
「ご主人、その後はどうですか?」
 
大石さんが当研究会の会員になってから3ヶ月目に入ったある日、3回目の話し合いの
席で私は尋ねました。
 
「えっ? 何が、ですか?」
 
「ええ、いろいろとね」
 
このような、一見、いい加減な聞き方を、私はいつもしています。
このような聞き方をすることで、会員さんが、今一番自分にとって課題になっている
問題についての話を聞き出すことができることが多いのです。
 
私から「○○はどうですか?」と尋ねてしまうと、こちらの一方的なテーマでしか
話し合えなくなってしまうことになります。
ところがこのような聞き方をすることで、会員さん自身が、現段階の自分のお店の
課題を探し出してもらえるようです。
 
 
「はい、売上は、本当に少しずつですけど、増えてきました。でも、まだ楽になったと
は言えない状態ですけど・・・。それと、新しいメニュー表がやっとできました。
1週間かって、やっとできました。そのうちの2日ほどは徹夜に近かったですよ。
それとオペレーションなのですが、まだ正直言ってうまく機能しているとは言えません。
これはなかなか難しい課題です」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-059

「ええ、そういうことです。しかし、それを調理場にいつも入っているご主人が、
すべてをコントロールするというには無理があります。このオペレーションにはフロア
を担当している従業員の方の協力が絶対に必要になります。従業員の中から誰かを選出
して、このオペレーションという考え方をしっかりと覚えてもらうように教育して
ください。しかし、いっぺんに完璧を狙わないでください。まずはオペレーションと
いうものを意識することかはじめてみてください」
 
「やってみます」
 
「お願いします。では今日はこのぐらいにしましょう。今日話し合ったことは、
メニュー表のこと、そしてオペレーションのことです。この2つは売上を大きくする
ための“客単価”という要素に影響してくることでのすので、がんばってやってみて
ください。またメニュー表を作る段階でわからないことがありましたら連絡してください。
では来月にまた来ます」
 
 
サービスを強化すればお客様は喜んでくれます。
お客様が喜んでくれれば評判のお店になることができます。
  
飲食店でのサービスの基本は「お客様を覚えること」「お客様の感動してもらうこと」「オペレーションを磨くこと」の3つです。
でも、感動をつくることはとても大変なことです。
課題として考えてくことは大切なことですが、やってみるととても難しいことだと気が
つきます。
 
そうであれば、まずは他の2つから実践することです。
他の2つは技術です。
技術はその気になって訓練すれば上達します。
この2つの技術だけでも十分に戦えるお店をつくることは出来るはずです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-058

料亭の女将さんたちは、そのお客様の状況の違いを瞬時に感じ取り、料理をしている
料理人さんたちに伝え、料理の順番をたくみに調整
していました。
 
料亭の料理人さんたちは、日ごろからこのような調理場の指揮者ともいえる女将さんの
采配で、すべてのお客様に満足のできる調理速度を維持していたのです。
 
このオペレーションは、料亭だけでなく、居酒屋のような大衆飲食店においても、
繁盛店には欠かせないものとなっています。
お客様は来店したばかりの時には早く注文品を欲しがるのは当然です。
たとえば大人数での入店時に、ドリンクの注文がバラバラであっても、全員の注文品が
少しの遅れもなく用意されたとしたら、すぐに乾杯の発声もできますが、そうでない
場合には、先に配膳されたビールの泡もなくなってしまいます。
そんなお店では、自然に追加注文を控えるようになってしまうものです。
 
ドリンクに限らず料理においても同じです。
自分のテーブルに何も出でいない時には、隣のテーブルに配膳される料理がやたら
気になってしまうのが人間です。
はじめの料理の出方が遅いお店は、自然に再注文を控えるようになってしまうのです。
 
ところが、ある程度お酒とお料理がお腹に入ると、追加の料理が少しぐらい遅れたと
しても時間的な感覚は鈍くなります。
うっかりすると追加注文したことも忘れてしまっていることもまれではありません。
 
このようなお客様の相対的な時間間隔を把握して、オペレーションを組み立てることが
できれば、その分注文数量を増やすことが可能になります。
また、このオペレーションを上手にすることでお客様からの満足度は増加し、今後
ごひいきにしてもらえる可能性も高くなるのです。
 
 
「なるほど、今まで、勘だけでさばいてきましたけど、ちゃんと考えてやらなければ
ダメということなのですね」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-057

「お話したいことは“オペレーション”という考え方のことです。オペレーション
とは料理の注文を受けた場合に多少の時間差であるときに、誰から注文された料理
から作って出していくか、というお店の基本的な考え方のことです」
 
「そんなの、注文順ではないのですか?」
 
 
   お客様は注文した料理が自分のテーブルに
   車での時間が長いと感じたお店では、追加の料理を
   さける傾向があります。「ここはいつも遅いから
   早めに注文しよう」なんて考えてくれる人は、まずいません。
   では、注文が一度に込み合ってしまった時には
   どうすればいいのか? それを解決するのが
   オペレーションです。
 
 
「はい、通常はそれでいいのです。しかし、お客様が多く入っているときに、
その順番を守っていれば、お客様によってはずいぶん待たされる事態が起こりえます。
たとえば、来店したばかりのお客様からの注文であっても、前からいるお客様からの
注文が前につかえてしまって、来店したお客様のテーブルには何も料理が出てない
状態が続く、というように、です」
 
「ええ、それはあると思いますが、それも仕方がない。先のお客様だって待って
もらうことだってあるのですからね」
 
「でも、そんな考え方では注文数量も料理単価も上げることはできませんよ。
お客様の数が多くて注文が混みいっているときでも、お客様の感覚からすると
待たされているような感じを受けないように作業する。これがオペレーションの
目的なのです」
 
 
私は、料亭の女将さんたちが調理場で、お客様の料理を食べる進行に合わせ、
絶妙のタイミングで調理長に次の料理の依頼をする姿をずっと見続けてきました。
 
料亭の女将さんたちが、それをオペレーションという言葉を使っていたとは思えません。
 
よく見てみれば、確かにお客様によって話に花が咲いているとかお酒を楽しんでいると
か、といった状況の違いによって料理の進み具合もまちまちです。
ならば、お店側も、提供する側の単純な順番という考えでで出していたら、温かいもの
は冷めてしまうし、反対にテーブルの上に何もなくなってしまうこともあるのです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-056

マスターは引き出しの中からいつも使用している当日のお客様ごとの注文品と価格が
メモされている売上伝票と、レジのデータが集計された1枚の表を見せてくれました。
 
売上伝票は既製の短冊形のものです。
注文を受けた料理名とドリンク名が注文数とともに表の中に書き込まれています。
集計はレジスターを使っていて伝票に価格は記入されていません。
伝票の上のお客様欄には名前がわかっているお客様書かれていますが、全員の名前まで
は記入されていません。
テーブル番号と来店時刻は書かれていました。
それと、先月から実施しているお客様データの用紙にもいろいろなエピソードが
書き込まれています。
 
レジの集計表には、その日の合計売上、料理とドリンク、別々の合計売上、そして
合計客数が打ち出さています。
料理ごと、あるいはドリンクごとの分類売上までは管理してありません。
 
 
「うん、やはりね・・・」
 
「何が、ですか?」
 
「ええ、これらのデータを見る限りにおいては1日の客数が多い日は客単価が安く、
少ない日はまあまあという傾向がありますね。そして、客数が多い日の伝票をみて
みると、お客様が、お店が忙しいのを察知しているみたいな注文の仕方をしているの
ですね。たとえば、料理の注文は簡単に作れる比較的安価なものが多く出でいるし、
ドリンクもいつもと比べてお客様一人当たりに対しての注文が少ない・・・」
 
「はい、それはわかっています。それが悩みのタネなのです。一人で料理を作って
いるもので・・・」
 
「大事なことをお話します。客単価を上げるためには注文数量を上げることを考えて
いかなければなりません。しかし、今、ご主人が言われるとおり、一人で調理をして
いれば作る量にも限界というものがあります。でも、はたしてそれだけでしょうか?」
 
「どういうことですか?」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-055

「それと、メニュー表の1ページ目には、ご主人のお店に対する思いを載せるよう
にしてください。“誰の何のためにこのお店をやっているのか”という店づくりの
思いです。それを、メニューを見たお客様の目に真っ先に飛び込んでくるようにします」
 
 
お店をやっている根拠をお客様に知ってもらうことは大事なことです。
ところが、それを日常のお客様との会話の中で改めて口に出すことは難しいことです。
メニュー表が、お客様とお店をつなぐの第一のセールスマンであるならば、その
セールスマンにいつも“経営者の思い”を語らせてやればいいのです。
 
メニュー表という飲食店の道具を、ただ注文を受けるときの陳列棚の役割として
考えるのではなく、経営者からの心からのメッセージとして位置づけるようにする
わけです。
 
 
「あのー! それで、そのメニュー表にすれば料理単価上げてもいいですかね?」
 
「いいえ、メニュー表をつくり変えたからって料理単価は値上げできません。これは
料理の注文しやすくして一品でも多く注文をいただくためのものです。もっとも季節
によってメニュー表を差し替える時に、さまざまな調理工夫をこらして値上げする
ことはできます。それと、メイン料理の何点かにはお店からの推奨のお酒の写真も横
に掲載するなどして、料理を選びながら一緒にお酒も注文できるようにしていきます。
これによってドリンクの売上が伸びることを期待します」
 
「ほう、なるほど、料理は料理、お酒はお酒といった別々のメニュー表ではないの
ですね」
 
「いいえ、従来のドリンク用のメニュー表は残します。もっともそのドリンク用も
写真を入れたものにリニューアルしたいのですがね・・・。とにかく大変な作業と
思いますが私も協力しますの、料理メニュー表からつくり直してみましょう」
 
「やってみます」
 
「では、次の対策に移りましょう。この1ヶ月間の売上伝票とレジの集計表を見せて
ください」
 
「はい」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-054

「はい、はっきり言いまして、すごく大変だと思います。きっと2,3日は徹夜覚悟
ですね。でも、その一生懸命さというか、努力というか、情熱というか、ご主人の
そんな気持ちがきっとメニュー表に表現されて、お客様の心に伝わっていく

思いますよ」
 
「そんなものですか?」
 
「そんなものです。メニュー表というものは、考えてみれば、お客様とお店をつなぐ
一番のセールスマンです。お客様でメニュー表を見ないで注文する人はほとんどいま
せん。多くのお客様は来店するなりメニュー表を見るのが通常です。ひょっとすると
ご主人よりも先にメニュー表に書かれている言葉に触れるということだってあるかも
しれません。そのメニュー表にしっかりとご主人の気持ちが込められているのであれ
ば、お客様は『このお店はきっと料理も大丈夫だ』と信頼してくれるはずです」
 
 
メニュー表はユニークさが一番だ、と思っている店主さんは多いのでは、と思って
います。
デザイン的に面白く、そして料理名がユニークにネーミングされている、そんな
メニュー表が流行った時代もありました。
 
しかし、メニューは見た人にとってわかりやすさが第一です。
 
料理名も、どんなに小じゃれたネーミングであっても、それから実際の料理が
イメージできなければお客様はその料理を注文することはありません。
枝豆を揚げ衣にした料理を“ずんだ揚” と言いますが、それで料理をイメージ
できる人はほとんどいません。
しかし、そこに料理写真があれば別の話になってきます。
 
よく、写真を掲載するとファミレスっぽくなってしまうと思われていますが、
写真の撮り方の工夫で高級レストラン風に見せることもできます。
それに、やはり写真からのメッセージはどんな言葉よりも説得力はあります。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-053

   客単価を上げる対策としてはお店の業態に
   よってさまざまだと思います。あきらめる前に
   考えることです。1000円の料理をそのままで
   1200円に改定したら単なる値上げでしかありません。
   味をレベルアップさせるとか、トッピングを工夫
   するとか、いろいろな技術を使ってお客様に納得
   してもらうことが必要です。
   しかし、料理価格を上げることだけが客単価を
   上げる方策ではありません。
 
 
「まず、メニュー表を直しましょう。ちょっと現在使用しているメニュー表を見せ
てください」
 
 
持ってきたメニューはA3の用紙に手書き風の文字で書かれた料理名に価格がついて
いて、ところどころにカラーペンで彩色され、それをラミネート加工した、ちょっと
前の居酒屋で流行ったよくある形式のメニューでした。
 
 
「ご主人、このメニュー表を全面改修しましょう。メインにしている料理には料理
写真も載せて、さらにご主人からのメッセージもその写真のキャプションとして
書かれているようなものに変えましょう」
 
「ええ? そんなものを業者さんに頼んだらコストが・・・」
 
「自分達で作るのです。デジカメがあれば写真は撮れます。写真の撮り方や構図の
出し方はその時に私が教えます。レイアウトパターンは私がいくつか持っています
のでお見せします。印刷もパソコンを使えばカラーでできます。それを文具屋で売って
いるアルバムホルダーなどに綴ってブック型にします。それなら、季節ごとに差し替え
れば済みますからね」
 
「・・・でも、料理の写真を撮るとなると実際にその料理を作らなくではならないので
すよね? そんな、時間は取れるのかなぁ」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-052

   何かをやったら必ずその成果を目に見える形として
   残しておくことが大切です。そのためにはどうする
   のかという仕組みを考えていきます
 
 
マーケティングの基本中の基本は“ plan→do→check→action”と言われています。
“企画・計画→実行・実践→調査・検証→再考・再企画”ということの繰り返しと
いう意味です。
どんな企画や計画もその成果をチェックする仕組みを持たなければ意味はありません。
 
サービスの目的はただ1つ、お客様にもう一度来店してもらいたい、ということだと
思うのです。
であれば、サービスの成果をチェックするテストを日ごろの商売の仕組みの中に入れ
ておかなければ、次への改善につながりません。
 
 
「わかりました。さっそく今日からでもはじめてみます」
 
「サービス券には有効期限を設けた方がよいかもしれないですね。あくまでも統計を
取るということですから」
 
「承知しました」
 
「それで、今日話し合いたいことは、このことではないのです。前回に話したように
売上とは客数×客単価ですが、今回は“客単価”について、この数値を少しでも
上げる方策について話し合いたいと思います」
 
「ええ、それができれば助かります。何せ、『安い』とお客様に言っていただけるの
はうれしいのですが、もう少し使ってもらいたいと思っているのです。でも、料理や
お酒の値段を上げればお客様が来なくなってしまうのでは、と思うと、なかなか値上げ
はできません」
 
「そうですよね。あからさまのドリンクや料理の値上げはお客様を減らす原因にも
なりますものね。えーと、前回書いたメモは残っていますか? そうその客単価は
“料理単価”と“注文数量”の掛け算になっていますよね。ご主人の言われるように
お客様が『値上げしたな』と感じられるようなことはしたくありませんけど、この
2つの数値を少しでも上げるような方策を考えていきましょう」
 
「はい」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-051

人は褒められるとうれしいものです。
もっと褒められようと、もっと努力をしてくれます。
「飲食店では、人間は 叱るより 褒めておだてて 使うもの
これも料亭の女将さんから教わったことです。
 
 
「ご主人、実践して1ヶ月たったのですから、ここでお客様のリピート感覚の調査を
してみましょう。お客様の気持ちの中に“もう一度来てもいい”という感情があるか
どうかのテストです」
 
「どうするのですか?」
 
「まず、名刺大の用紙で次回来店時に利用できるサービス券をつくります。
そうですね、金額は500円ほどでどうでしょう。次回にこのサービス券を持参して
くれれば500円を割り引きます、というものです。どうです? 500円ではきつい
ですか?」
 
「いえ、それでまた来店してくれるのであれば安いものです。でも、それで来てくれ
ますかね?」
 
「ですから、それがテストということです。500円という価値は、来てもいいという
人にとってはせっかくなら使おうと感じる金額ですが、二度と来たくないと思って
いる人にはこんなの捨ててもいいと感じる金額ですよね」
 
「まあ、そうですね。行きたくなければ500円得しても行きたくはありませんからね」
 
「ということは、このサービス券を利用してくれるお客様は、お店の料理やサービス
かが気に入ってくれている、少なくとも嫌われてはいないということです。ですから、
そのサービス券の回収率を調べていけば、お客様にリピートしてもらえるだけの料理
やサービスを、現在のお店側が提供しているかどうかをある程度計測できるのです」
 
「なるほど。サービス券をお客様リピートの促進のためではなく、お店のテスト
として利用するということですね」
 
「そのとおりです」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-050

お店側としては商売ですから覚えていたとしても、お客様はすぐに忘れてしまいます。
そんなとき、2~3日後にお礼のハガキが届けば、お店を思い出してもらえる可能性は
格段と高くなります。
もっとも、思い出したとしてもすぐに来店という動機には結びつきませんが、
そのまま忘れ去られるよりもましということです。
 
 
「はい、ありがとうございます。とにかく何とか浮上したいもので・・・」
 
「で、お客様の名前を覚えることとお客様の好みなどの観察の方はどうですか?」
 
「ええ、なかなか完璧とは行きませんが、従業員と一緒に、今、ガンバッテいます。
そう言えば、先日もフロントの女の子が『あっ! ○○さん! こんばんは! 
いらっしゃいませ!』と言って出迎えたら、私が呼ばれて『あんたのところは教育が
いいね』と、えらく褒められました」
 
「そう、それはうれしかったですね。で、その女の子にはそのことを伝えました?」
 
「えっ? いいえ、べつに・・・」
 
「お客様に褒められたのはその女の子の努力のおかげですから、すぐに彼女に伝えて、
ご主人からも褒めてあげてください。きっともっとやる気になると思いますよ」
 
「もう、だいぶ以前のことですが、今からでもいいですかね?」
 
「仕方ありません。その時は言いそびれたことにしてとにかく褒めましょう。次からは
即、褒めてあげてくださいね」
 
 
   「手柄は従業員のもの、責任は経営者のもの」です。
   従業員は自分がやったことでお客様に褒められるよりも、
   雇用主に褒められたほうが百倍も嬉しいものです。
   「給料はお客様がくれるもの」とよく言われますが、
   そんなことを感じている従業員は一人もいません。
   給料は毎月雇用主から受け取っています。それが実感です。
   従業員の関心はいつも雇用主に向いています。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-049

   「もう少し一人あたりの客単価があがって
   くれれば・・」と考える人は多いと思います。
   でも、値上げをすればお客様の数に影響してきます。
   客数と客単価は飲食店にとっては永遠の課題です。
   そこで値上げとは感じさせないで客単価を上げる方法
   をご紹介します。方法は2つ。注文数を増やすこと、
   そして料理単価を上げること、です。でも料理単価を
   上げることは大変。ならば注文数を増やすことです。
 
 
それから1ヶ月後のことです。
 
 
「どうでしたか、先月お話したことは実践していますか?」
 
「はい、なんとかお客様の個人情報をいただく仕組みはできました。『ワインが
当るキャンペーン企画です』って言うと、ほとんどのお客様が名前と連絡先を
残しておいてくれます。すでに400人ほどの名簿ができました」
 
「そうですか。それは上出来です」
 
「それから、せっかくお客様よりいただいた情報ですので、住所の確認だと思って
ご来店のお礼のハガキを出すようにしました。ほとんどが本物の住所を書いて
くれたようでした」
 
「あらら、すごいじゃないですか。実は前回そのことも話そうと思ったのですが、
ハガキ代もバカにならないと思いましてやめたのです。ご主人もなかなかやるじゃ
ないですか?」
 
 
お客様の頭の中は大変忙しい、と前にもお話しました。
前夜食事をした飲食店のことなど、朝になってしまえば仕事のことで頭がいっぱい
で忘れ去られてしまうのが普通です。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-048

   顧客管理をすることで売上に対する考え方を
   変えることができます。
   たとえば、月の損益分岐点が180万円の売上のお店が
   あったとします。すると180万円を売り上げるためには
   月の営業日数を25日とすると1日あたり72,000円を売上げ
   ようと考えるのが普通です。
   ところが、顧客管理によって一人のお客様が1ヶ月間に
   使ってくれている金額がわかるようになりますので、
   今度は1ヶ月間に3万円を使ってくれるお客様を60人
   創ればよいという考え方に変えることができます。
   それによって、これまでのように不特定多数を相手に
   商売を考えていくのではなく、60人という限定された
   お客様に対しての商売を考えればよいことになります。
   いかにして60人のお客様を見つけるか。いかにして60人
   のお客様に1ヶ月間で3万円を使ってもらえるか。
   このように考えていくわけです。
   そのために自分のお店の主力顧客をイメージする戦略が
   “ターゲッティング”といわれているものです。
   そして、その主力顧客の設定ができたら、そのお客様に
   どのような立場で役に立つことができるのか、自店の
   一番得意とするものは何かを設定していくことが
   “ポジショニング”といわれている戦略です。
   でも、難しい話は横に置いといても、視点を変えて考えて
   いくことで、思わぬ発展が期待できることもあります。
   それに、一人の人間が1軒の料理店に3万円を1ヶ月間で
   消費することは、それほど難しい話ではありません。
   友人と一緒に、家族と一緒に、仕事での会食に・・・と、
   結構な金額を外食に使っているはずですからね。
   要は、お客様の1ヶ月で使える金額のどれだけを自分の
   お店に回していただけるかということです。言い換えれば、
   「お金を使う場所を自分のお店として選んでもらえるか」
   ということですね。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-047

第1段階は、お客様のさまざまな情報をデータにし、それを販売活動に有効的に
利用することを提案しました。
考えてみれば、商売をしていくには当たり前のことなのですが、飲食店、特に
料理人さんがオーナーであるお店では、このような当たり前のことをやっていない
ことが多いのです。
 
「料理で評判になればお客様は探してまで来てくれる」と期待したいのでしょうが、
現実はそんなに甘くはありません。
お客様の頭は、昨夜食べた料理の内容ですら忘れてしまうほど忙しく、おいしい
料理を食べたとして感激するのはその時だけで、翌朝起きればすっかり忘れてしまっ
ています。
試しに、自分で過去1週間の食事を思い出してみるといいでしよう。
どれだれ覚えているかを実験してみれば、いかに食事の記憶が遠のいてしまっている
ことがわかるでしょう。
 
繁盛し続けるお店をつくるには、料理の評判だけを上げることではありません。
繁盛し続けるお店とは、“何となく寄っていきたい”、“行かないと寂しく思える”、
“すぐに思い出される”そんなお店
なのだということを知っておいてください。
 
そのようなお店は、人と人との親密な関係の中で生まれます。
 
親密な関係に一番必要なものは、お互いについて深く理解しあうことです。
“経営学は人間学”とはよく言われる言葉ですが、飲食店こそこの言葉がピッタリと
当てはまるビジネスだと私は思っています。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-046

観察という文字の“観”とは隠れたものをみる、そして“察”は見えないものを
みるという意味を持っています。
お客様を観察するということは、お客様の態度や表情、しぐさの奥ある通常では
目に付かないものに着目するということです。
 
観察するには、何よりも意識をするということが大切です。
どういうことかと言いますと、たとえば、牛です。
誰でも牛を知らない人はいません。
ところが、「牛の角と耳の位置はどちらが前ですか?」と訊かれたときに、
答えられる人は少なくなります。
「エート、牛に角があることは知っているけど、耳との位置関係といわれるとなぁ」
と思われる人がおおいのではないかと推察します。
 
それは、牛をみたことはあるけれど、角と耳の位置を意識してみたことはないと
いうことなのでしょう。
これが“意識をして見る”ということです。
言い換えれば、観察力です。
 
そこで、「意識をしなさい」と言ったところで、なかなかはじめは従業員さんに
わかってもらえないのではと考えて、今回は注文票とは別にその他いろいろと気が
ついたことを記録するメモ用紙を用意してもらうことにしたのです。
これで、自然と意識するようになってきます。
先ほどの牛の例で例えれば、耳の位置と角位置、鼻の穴の大きさ、乳房の大きさや
乳首の数などを記録していくということです。
そして、そのような習慣をつけるということになります。
それが観察力です。
この観察力を身につけるということは、繁盛する飲食店をつくるためは必ず必要な
ことになってきます。
 
「わかりました。とにかくやれるだけやってみます。他には何をすれば・・・」
 
「今日はこのくらいにしておきましょう。とにかく銀行の返済が再開されるまでに、
いろいろな方策をしていきましょう。でも一度にいろいろなことは無理です。今は、
顧客管理データを作るための個人情報の取得とお客様の名前を覚えること、そして
お客様を観察して今まで知らなかったことを把握する。この3点を心がけて1ヶ月
ほど頑張ってください。1ヶ月後に私から連絡しますので、また話し合いましょう」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-045

「まだあるのですか?」
 
「はい、それと好みです。味付けは濃いのか薄いのか、量は大目なのか少な目なのか、
お酒はビール党なのか日本酒党なのか・・・、などといった嗜好のことです。
それにどの席が一番お気に入りなのか、いつも誰と一緒なのか、仕事で利用している
のか、プライベートなのか、といったことも知っておくといいですね。そうそう、
奥様の誕生日や結婚記念日といった特別な日などもね」
 
「そ、そんなことまで・・・! そんなには無理ですよ」
 
「そうですね。すべてを覚えておくというのは無理かもしれません。でも記録して
おくということはできます。そのために、売上伝票とは別の用紙に、“お客様情報”
として気づいたことをメモしておく用紙を用意しておくといいですよ」
 
「別の用紙ですか?」
 
「はい。その用紙に書き込む人はご主人を含めすべての従業員の人たちです。
注文を伺うとき、お料理を出すとき、お皿を片付けるときなどにお客様と一言でも
話すようにして、気づいたことを書いておくのです。『恋人と一緒・ちょっと深刻
そう・話しかけない方がいい・お料理は少なめ・強いお酒を注文・・・』なんて
いうように、です」
 
「それを従業員のみんなに、ですか?」
 
「はい、テーブルごとに担当者を決めて担当者が記入することも考えられますが、
ご主人のお店はそのような体制はとっていませんよね。ですから、お客様に接した
 
人にはすべて記入してもらってください」
 
「忙しいときに、みんな、書いてくれますかね?」
 
「いきなりは無理です。強制したらかえってぎこちなくなります。人間は不思議
なもので、今までは無かった記入する用紙がそこにあって、それに書く意識が
働けば今まで気づかなかったいろいろなものを見るようになるものです。ですから、
ただ料理を運んだり片付けたりする仕事ではなく、お客様を観察するのも仕事の
うちだと教育してください。実際にやってみると結構たのしいものです。
“探偵ごっこ”みたいなものです。なれてくるとうまい誘導質問をして奥様の
誕生日なども聞き出すことができるようになりますよ」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-044

「えぇぇ、3ヶ月や半年ぶりのお客様にも、ですか?」
 
「そのとおり。それでなくては“他店において違和感を覚えてもらえる”という
ことにはなりませんよ。他店では久しぶりのお客様には名前を呼んでのご挨拶は、
まずしないと思いますからね。と言うよりも『出来ない』と言ったほうが当たっ
てますね」
 
 
一昔前の料亭の女将さんたちの特技は、お客様の顔と名前、そして性格までも
覚えてしまうことだったのです。
ある女将さんの話によれば、それは日頃からの努力の賜物というものだというのです。
「お客様の顔を覚えなければ商売にならない他の料亭と競争もできないという環境の
中で、いかにしたら他所よりも早く覚えられるかということに知恵をめぐらせて
いた」と話してくれました。
 
そのための1つの方法は、お客様の名前に自分なりの肩書きをつけるという方法です。
わかりやすいために例をあげると、小学校時代の友人を思い出す際に、ただ○○君
よりも6年4組の○○君と言われた方が思い出しやすくなります。
これと同じで、お客様の名前に会社名のほかに自分流のくくりとしての肩書きをつけ
て覚えるということです。
「怒ると恐い××会社の○○様」といった具合です。
ただ名前だけではなかなか顔と一致しないのに、このような自分流の肩書きをつける
と覚えられるそうです。
 
そう言えば、人間の記憶に関する専門書の中にも、喜怒哀楽といった感情が強い
思い出は鮮明に記憶されると書いてありました。
女将さんの知恵もこの感情を利用した記憶術だったのです。
 
「ほんとうに覚えられますかね?」
 
「そりゃ、ある程度の訓練は必要です。でもご主人、今までは特に意識をして
お客様の名前を覚えようとはしていませんでしたよね。では、これからは意識する
ようにしてください。覚えようと意識すれば覚えられます。そして、これは従業員
全員で努力してみてください。それと・・・」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-043

「ほら、本には著者のやってきた成功ストーリーが書かれているじゃないですか。
そこには、明日からそれをやればすべてうまく行くようなことが書かれています。
でも、それは著者がやって成功したことであって、ご主人がやっても成功するとは
限らないということです」
 
「そうなのですか・・・」
 
「成功者の数だけ成功法則があるということです。ですから、ご主人はご主人が
成功する成功法則を生み出してかなければなりません」
 
「うーーん」
 
「そんなに考え込まないでください。もっと気軽に考えていきましょう。先ほど
お客様の感動という話をしましたけど、現実の話がお客様は飲食店のサービスごとき
にそんなに簡単に感動なんてしてくれません。そりゃ、初めだけは感動してもらえる
サービスもあります。でも、次の来店の時にも同じことをしても、誰ももう感動など
しませんよ。ましてや『感動だ、感動が大事だ』って考えをめぐらしたって、
そうそう次々と感動してもらえるアイデアなんて出ではきません。それよりも、
ご主人のお店の常連さんが他のお店に行ったときに、『アレ? 何か違うな、
落ち着かないな』と違和感を覚えるようになってもらえればいいんだと考えてください。
ですから、そんな特別なことでなくていいのですよ。」
 
「うーん。ますますわからなくなってきましたけど・・・」
 
「その“他店において違和感を覚えてもらう”ためのひとつとして、料亭の女将さん
たちがやっていたことを、今日はお話したいのです」
 
「はい」
 
「それは、お客様一人一人のお名前と好みをいち早く覚えること、です」
 
「ほぅ、よく言われることですね」
 
「そうです。ところがこれが非常に効果的なのですよ。お客様は誰しもお店の人に
名前で呼ばれればうれしいものですよね。でも、月に何度も来店したお客様であれば
名前で呼ばれて当然です。ところが3ヶ月ぶり、半年ぶりに来店したお客様が
『○○様、いらっしゃいませ』というように名前で呼ばれたとしたら、『おっ!』
って感じませんか?」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-042

「言葉で言ってしまえば“サービス”ってことなんですが、実は、このサービス、
とっても幅が広くて奥が深いものなのですよ。そして、こう言っては料理人さん
には申し訳ないのですが、お客様を何年にも渡ってつなぎとめておくのは、
料理の味よりもサービスなんです」
 
「へぇー、そんなものなんですかねぇ」
 
「あれ、今度は気分を悪くしましたか? 料理人さんに対して『料理はどうでも
いい』って言っているのではありません。たとえ料理がそれほどでなくても、
サービスで頑張れは何とかなるってことを言いたいわけです」
 
「ほう、では、その“お客様をつなぎとめる”サービスとやらを聞かせてもらい
たいですね」
 
「ああら、けんか腰になっちゃったですね。サービスといってもなにも標準的な
決まった形があるわけではありませんし、サービスの形や程度は、お店によって
いろいろなのです。言ってみれば、これが個性ということですね。ですから、
ご主人には、まだ少し抵抗感があるようですが、ご主人のお店独自のサービス
というものを、これから一緒に考えて実践してもらいたいわけです」
 
「何だ、○○をしろというんじゃないんだ」
 
「そりゃそうですよ。そんなノウハウがあったら皆さん苦労はしていませんよ。
よく『お客様を感動させなさい』ということが言われますけど、聞けばまったく
そのとおりなのですが、ではいったいどうすればお客様は感動してくれるの
でしょうね?」
 
「そうだよなぁ・・・」
 
「このお客様の感動のつくることについては、いろいろな書物も出でいますし、
読んで勉強してくれることはありがたいことです。でも、これだけは注意して
ください。本に書いてあるようなことをご主人が同じようにやったとしてもうまく
いきませんからね」
 
「どういうことですか?」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-041

「そんなの、あるんですか? 料亭ですから、“売り”はやっぱり料理じゃなかった
のですか? 私が修行してきたいくつかの店も料理が一番の売り物だと評されていま
したし、私も料理人としては同じ考えです」
 
「繁盛に料理のレベルが大切であることは当然です。ところがそれと同じ、いいえ、
お客様のリピートというテーマで考えていく場合には、それ以上に大切なものが
“サービス”と呼ばれているものです」
 
「サービスですか・・・?」
 
 
   一人のお客様が何度でも利用してもらうことが
   できれば、いつもいつも新規のお客様を集める
   必要はありません。
   何度でも利用してもらえる店づくりに欠かせないのが
   サービスといわれる目には見えないものなのです。
   飲食業はサービス業でもあることはわかっている
   はずなのに、では「サービスってなに?」と訊くと
   返事かできないオーナーさんが多いのです。
 
 
オーナー料理人は「なんだそんなものか」というようながっかりした口調でポツンと
一言こぼしました。「そんなことなら、とっくにわかっている」と言いたげな表情
でした。
 
飲食業においてサービスは欠くことができないものです。
ですから、通常、誰も自分のお店がサービスで他店に負けているとは考えていません。
小さなお店ですから、サービスマニュアルなどといったものはありませんし、
そんなものをつくればチェーン店やファミレスのような雰囲気になってしまい
かねないことはわかっています。
ですから、大石さんはお店のスタッフには「自分がしてもらってうれしいことを
お客様にしてあげなさい」と今までも教育していたのです。
 
 
「あれ? がっかりしました?」
 
「ええ、正直・・・。だって、それって当たり前じゃないですか。それに
“料亭の女将の法則”ってことですから、もっとすごいものと思いました」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-040

「では次です。次は一人のお客様がより多くリピートしてもらえる方法について考えて
いきましょう。先ほどのたとえの例で言えば、400人のお客様に同月に2回、3回来て
もらえるようにするための対策ですね」
 
「対策ですか・・・? ですから、私の料理の味は評判がいいのです。そして値段も
安いと言われています。それでこんなざまですから・・・。内装を直したら・・・、
とも言われたのですが、そんな資金なんてありませんので・・・。だからその対策
として、チラシでも巻いて、自分の料理のおいしさと安さをアピールすればいいん
じゃないか、と思ったのです」
 
「でも、それをしてもダメだった?」
 
「ええ、だから・・・」
 
「ご主人、私は過去30年間飲食店に食材を納入する仕事をしてきました。飲食店といい
ましても、一昔前は料亭というスタイルが多くて、そこには“女将さん”という存在の
人がいました。まあ、ほとんど女将が経営者だったわけですがね。長い間多くの女将さん
がやっていたことを最近になって振り返ってみますと、そこに飲食店を繁盛させ続ける
法則とも思えるものがいくつか浮かび上がってきたのです」
 
「飲食店を繁盛させ続ける法則ですか?」
 
「ええ、うまい言葉ではないのですがそんなところです」
 
「でも、じゃあ、なんで料亭はすたれていってしまったのですか?」
 
「そうですよね。でも私は料亭がすたれたのはその法則のせいではなく、法則が
伝承しなかったことにあると思っています」
 
「伝承しなかった?」
 
「そうです。実は料亭のほとんどは2代目以降にすたれていっているのです。創業者
時代になくなってしまったお店はごくわずかです。そして不思議なことに、後を継いだ
後継者が女将の男の子供さんであった場合に廃業しているのです。私は、その女将さん
と息子さんの間に、飲食業としてのあるものが継承されなかったのでは、と考えている
のです。ですからやはり法則はあるのです」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-039

「もっとも、偽名やでたらめの住所を教えるお客様もいないわけではありません。
でも、そういったお客様が今後、何度も来店することはないと思いますよ」
 
「わかりました。早速、明日からやってみます。商品は当店においてある
ワインにします」
 
「そうですか。でもこの抽選はお客様の個人情報を取得するためのひとつのアイデア
ですから、これに限ったことではありませんよ。また、いろいろとアイデアを溜めて
おいて、いろいろな方法で集めていってください」
 
 
個人情報保護の法律が施行されて以来、お客様の個人情報に関する取得は大変に
なってきました。
本来、賞品の抽選のためという目的で取得した個人の情報は、それ以外のたとえば
営業の活動に利用することは法律上はできません。
ひとつの目的で取得した情報を他の分野で利用する場合には、あらかじめその利用
方法についてお客様におことわりをしておくこと
が必要になります。
 
もちろん、今回の場合にも主たる目的は、お客様の来店履歴のデータづくり
あり、その先には営業活動を視野に入れてすることです。
そのために、抽選に参加するお客様の名前と連絡先を記入してもらう用紙には、その旨の
ことを明記しておく必要があり、そして実際には口に出して説明もしておく方がよいと
思います。
 
 
「顧客管理のためのデータづくりの基本であるお客様の個人情報の取得方法は
わかりましたか?」
 
「ええ」
 
「せっかくお客様の個人情報をもらうのですから、それ以後のお一人お一人の来店記録
はしっかりつけるようにしていきましょう。誰がいつ誰と来て何を注文したのかという
データを記録していくということですよ」
 
「はい、わかりました」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-038

   繁盛店は間違いなくお客様の来店履歴を
   記録しています。
   そして来店頻度や来店動機を調べることにより、
   顧客の分類し、その類のお客様に合った企画を
   提案しています。
   その第一歩としてしなければならないのがお客様の
   個人情報の取得というものです。
 
 
「こ、こきゃくかんりのデータ・・・? それってどうしたら・・・?」
 
「ええ、言葉で言うのは簡単なのですが、飲食店の場合での実践はなかなか大変な
ものです。まずは、明日から来店してくれたお客様のお名前と連絡先を聞き出す
ようにしてください。これがなければ何も始めることができません」
 
「全員に、ですか?」
 
「全員です。1日に何百人もあるわけではないから、できますよね?」
 
「でも、お客様に『お名前と住所を教えてください』なんて言ったら怒っちゃい
ますよ。それに、『何で教えなきゃならないの?』って・・・。それじゃあ、
かえって来なくなっちゃいませんか?」
 
「その通りですね。私もそんなことをいきなりお店で言われたら嫌ですものね」
 
「じゃあ、どうすればお客様の名前と住所を聞けるんですか?」
 
「聞くんじゃないんです。教えてもらうのです。もっと詳しく言うならば、教えな
ければならない状態をお店側がつくってやるのですよ」
 
「どういうことですか?」
 
「たとえばですが、ご主人のお店で来店したお客様に、月に1度抽選で5名様に
何かのプレゼントが当る企画をやっているとします。そして来店したお客様には
その抽選への参加を促すとしたらどうですか? 『抽選の結果はハガキで連絡します』
と言えば、お客様は名前と住所を教えなければなりませんよね」
 
「あっ、そうか!」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-037

「それを、今から一緒に考えていくのですよ。でも、まずは客数の実態を調べて
みる必要がありますね。先月のお客様で誰がどのくらいこのお店に来てくれたかの
データを見ることはできますか?」
 
「えーー? レジの1日の合計人数では誰がどのくらいなんてことはわかりませんし、
売上伝表もお客様の名前ではなくテーブル番号でしか記録してないですから・・・」
 
「たぶん、そうじゃないかと思っていました。でも大丈夫! ほとんどの飲食店が
そんなデータを持っていませんので・・・。でも、ご主人! だからといってしなく
て良いというわけではありません。売上を大きくするための大事な第一歩ですから、
このお店にはこのような顧客管理というデータづくりをまずは作りはじめるように
してください」
 
 
お客様一人一人の来店履歴やそのお客様の注文履歴などをデータとして管理している
飲食店はほとんどといってよいくらいありません。
レジスターを利用していたとしても、そのレジの集計から得られるデータは当日の
客数、当日の客単価、商品の部類別売上高ぐらいなものでしょう。
 
ところが飲食店にとって一番大事なものは、“お客様にどれだけ気に入ってもらえて
いるか”という感情的な指数です。

気に入ってもらえているのであれば、何回もいつまでも利用してもらえますが、
気に入ってもらえなければ、一度きりで“さよなら”ということになってしまいます。
 
この指数はレジスターの中の数字をいくら分析しても得ることはできません。
この指数はお客様一人一人の来店履歴というデータを調べることによってはじめて
わかる
ことです。
 
ポイントカードという仕組みも、実際にはこのようなお客様一人一人の来店の履歴
データをとることが大事な目的の一つであるのですが、どうもこの目的を理解して
導入しているお店は飲食店の中には少ないようです。
多くの導入店の考え方は、お客様への利用還元割引という程度のものだとしか考え
ていません。
ポイントカードを単に“客寄せ”、“割引サービス”の道具にしているお店が多い
のです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-036

「そうです。1000人です。そしてこの400人のお客様がもしも先月にはじめて来店
してくれた新規のお客様ではないとしたら、何も新しいお客様をつくらなくても
今までのお客様だけでも2倍近くの客数になるのではないでしょうか?」
 
「ええ、計算ではそうなります」
 
「そうですね。これは単なる計算です。実際にはこのような数字にするのは大変な
努力がいると思います。しかし、ここで分かっていただきたいのは、広告をして
新しいお客様に来店してもらうことだけが売上大きくすることではなない、今までの
お客様に繰り返し来店してもらえるお店にすることも大切だ
、ということなのです」
 
「話していることはわかりますが、でも、実際に何をどうやればお客様に何度も来て
もらえるようになることができるのですか? 私は料理には自信があり、他の店には
負けないと思っています。値段もどちらかといえばウチの店はリーズナブルだと言わ
れています。実際お客様は『安くて、おいしい。また来るよ』って言ってもらって
いるのです」
 
 
飲食店を出るときに、お客様が「ご馳走さま」「おいしかった」「楽しかった」
という言葉を残してくれるお店は大変多いのではと思われます。
そして実際、その言葉どおり何回も利用してくれているお客様もいれば、それっ
きり利用しないお客様もいます。
 
お客様がお帰りの際に残してくれる“お褒めの言葉”は、実は“縁切り言葉”として
「もう二度とこないよ」という意味に使われることもあります。
悪気ではないのですが、苦情を言ってお互いに気分を悪くするよりも、愛想だけの
お礼を言って二度と利用しない方が利用するお客様にとっては楽チンなのです。
 
 
「ご主人、お客様の言葉は大事にしなければなりませんが、大事にするのと信じるの
とは違います。お店の経営を考えるときにはお客様の言葉よりも行動を調べて判断する
ことが大事です。ご主人のお客様がすべてウソを言っているとは思えませんが、
『また来るよ』と言っていらしてもらえないのであれば、お店側に何かしらの問題が
あると考えるほうが正しいと思います」
 
「ええ、何かあるからこの有様なのですからね。でも、何をどうしたらいいん
でしょうか?」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-035

そして式の右側を次のように分解してご主人に見せました。
 
 
   売上 =(顧客数×来店回数)×(料理単価×注文数量)
 
 
「この分解した式の意味がわかりますか? 客数というのは、実際に一人のお客様が
一定期間に何回来店したかの積み重ねの数字だということです。わかりやすく言えば、
このお店の先月1ヶ月の来店客数が600人だったとしても、同じお客様が2回、3回と
来店していることもあるわけです。だから、先月の来店客数が600人だとしても、
その実態は400人のお客様が1回来店していて、100人のお客様が2回来店しているという
ことも考えられるのです」
 
「はぁ! そうだと思います。はっきりはわかりませんが・・・」
 
「そりゃ、今の段階ではわかりませんよね。では、売上を大きくするためには、
客数だけをまず見ていくと、顧客数を増やすことと来店回数を増やすという2つが
考えられるわけです。ここまではわかりますか?」
 
「ええ、それはわかります」
 
「ここで仮に、来店回数というものをまったく考えないとするならば、顧客数だけを
増やすことを考えていかなければ売上は大きくなりません。今までのご主人の考え方は
このようなものだったわけです。ですから、お金がかかっても広告をしていこうという
ことだったのです」
 
「そのとおりです。来店してもらえなければどうしようもないですから・・・」
 
「・・・ですよね。でも、ここからはよく考えてもらいたいのですが・・・。
さきほどの例で、もし月に1回しか来店しなかったお客様400人に2回来店してもらえて
いたら、月の客数はどうなりますか?」
 
「えーと、400人が2回だから800人と100人が2回で200人。合計1000人ですよね」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-034

「ご主人は以前、『広告宣伝をしてお客様に来店してもらう』と言っていましたけど、
それはそれで大切な考えです。しかし、現段階でいきなり広告に対してお金をかけると
考えるのはどうでしょうか? それよりも、ここはお金をなるべくかけない、つまり
広告という手段を使わないで繁盛店に少しでも近づく方法を考えましょう」
 
「そんな方法なんてあるのですか? いままでいろいろなことをやってきてダメだから
広告をしてお客様を集めるのではないのですか?」
 
「そうですよね。そう思ってしまうのも無理ないかもしれません。でも、ここからは
今までの考え方を白紙に戻して、真剣に聞いてもらいたいのですが、よろしいですか?」
 
「は、はい」
 
「まあ、そんなにかしこまらなくていいですよ。では、まずご主人に知っておいて
もらいたいのは、“繁盛”を作り出すためのひとつの公式なのです」
 
「繁盛の公式・・・?」
 
 
   利益を生み出す一番の原動力は売上です。
   そして飲食店のような店舗での商売では売上は
   客数×客単価という計算式で構成されています。
   だから、客数を増やそうと広告を考えるのですが、
   その前にやらなければならないことがあるのです。
 
 
「ええ、そんなたいそうなものではないのですが、売上というのは客数かける
客単価という式で表されるということです」
 
 
紙にその式を書きながら説明を始めました。
 
 
   売上 = 客数 ×客単価
 
 
「当たり前のことですから、これは理解できると思います。では売上を大きくする
ための要素をもっとよく知るために、この式の右側を分解してみます」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-033

人間は、「暗く」「さびしく」「つまらない」雰囲気は嫌いなのです。
 
 
「そうですね。はじめてお会いしたご主人の顔つきとは、まるで別人のように
明るく変わってきましたよね。ご主人は本来明るく楽しい人だったんじゃないのですか?」
 
「ええ、昔はけっこう“やんちゃ”で通っていまして、冗談を飛ばしたりして
周りを明るくさせる役回りだったのです。でも、商売をはじめてから、そんな
余裕もなくなってしまって・・・、家庭に帰っても子供が“遊んで”と言って
飛びついてくるのも、イライラしているとつい・・・。それで家の中も笑い声が
少なくなって・・・」
 
 
個人営業ではお店の不振はすぐに家庭に反映してしまいます。
本来なら、苦しいときほど助け合っていかなければならないはずの家族が、
いがみ合ってしまうのです。
男は、微力ながらも懸命に自分のお店を守ろうと必死に働いています。
そして、十分とは言えないまでも家庭に生活費を送り続けています。
ところが、そんな男の目から見れば、家で子供の世話や家事をしている女房が
ついつい遊んでいるとしか見えなくなってしまうことがあるようです。
 
そんな旦那が考えることはいつも決まっています。
「オレが一生懸命働いているからこそ、食っていけるんだ」と・・・。
 
でも、実は奥さんも家という職場で毎日懸命に働いているわけです。
子供を育てるという、たぶん世の中の仕事の中でも最高に難しい仕事に、
毎日向き合ってがんばっているのです。
ただ、奥さん仕事はお金を生む仕事ではなくお金を使う仕事になります。
 
だから、外でお金を生む仕事をしている男には、ときどきそんな奥さんの大事な
仕事を誤解してしまう
ことがおきるのです。
特にお金を生む仕事に苦労している人はなおさらです。
 
 
「ご主人。今日は、これからのこのお店をどのようにしたら繁盛するお店に変身
させることができるかについて一緒に考えて行きたいと思っています」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-032

   資金繰りが大変になってくると、そのことで頭がいっぱいで、
   顔つきまで険しくなってしまいます。自分では気がつきませんが、
   自然とマイナーな話題に興味を示し愚痴っぽくなってしまいます。
   そんな経営者のお店にお客様が集まることはありません。
   お客様は明るい世界が大好きです。
 
 
「おかげで銀行への返済も利息だけになり、今月の業者さんへの支払いも一部を
除いて大方は1ヶ月程度の延滞を承知してくれました。ただ、1万円程度の小額の
支払先の数軒に対してはお願いしませんでした。それに大家さんには不動産会社を
通してお願いしたところ、応援してくれるとの返事でした」
 
「そう、それは良かったですね。これでとにかく今月は枕を高くして眠れそうですか?」
 
「はい、まったく。今までは生きた心地がしなかったです。もうどうしたら
いいんだろう・・・、って、そればかりが頭の中にあって、店を開けていても
商売をしているって感じではなかったですからね」
 
 
実際、悪くなっていく店の実態はこのような悪いサイクルに陥っていることが多いのです。
資金繰りに悩みを抱え、それでどうしても顔つきや態度が暗くなってしまいます。
 
お客様方から楽しそうに話しかけられても、店主の頭の何かはお金のことで頭が一杯で
話題についていくことも笑い顔をつくる余裕もありません。
それどころか、かえってお客様の楽しそうな態度にひがみみたいな感情を抱いたりもします。
 
そして、口から出でくる言葉は「まったく、今は大変なご時勢ですよねぇ~」などと
いった場にはそぐわないマイナーな言葉ばかりです。
これでは、飲食を楽しもうとしているお客様は寄り付くはずはありません。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-031

一般的な統計からみればまずまずの成果か出ている広告でも、その広告にかけた
時間とコストを考えると不満を覚えてしまうのです。
 
たとえば、現在、飲食業でのチラシ広告の反応は1000枚の配布に対して5名の来店
があればまずまずと考えられます。
ところがチラシを自分で作成する時間やコピーするコストと比較してしまうと、
「そんなものか」と不満をこぼす人が結構います。
 
しかも、まずまずの成果を出し続けることが難しいのが広告というものです。
一度でも成果の出ない広告を経験してしまうと、もう今後の広告に対する期待も
しぼんでしまいます。
 
集客の広告はその効果が出るまでには時間とコストがかかります。
 
「銀行返済をするつもりで将来の繁盛のための投資だ」と考えて広告にお金を
かけてしまっては、資金繰りはますます苦しいものになってしまう危険に自ら
飛び込んでいくようなものです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-030

「業者さんや大家さんへのお願いはご主人にお任せしますけど、一度今後のことに
ついて話し合う時間を取れますか? 銀行の返済はストッフしてもらったとしても、
長くて1年。業者さんや大家さんにおいてはせいぜい1ヶ月分です。基本的にはまだ何も
解決していないということですよね。肝心なのは利益を大きくするための売上を大きく
 
することですよね」
 
「はい、それで今回いろいろな方面の方たちに支払いを待ってもらうことで生まれた
資金で広告を打って、お客様にもっと来店してもらえるようにすればといいの
ですよね・・・」
 
「ちょ、ちょっと待ってください。今の状態で広告をしたとしても、まったく意味は
ありません。お客様にもっと来店してもらえるために広告を打つことは、それはある
意味では大切なことなのですが、その前にご主人には考えてもらいたいことが
たくさんあります」
 
「はぁ・・・」
 
「これは電話で話すことではありません。一度じっくりと、お休みの日にでも
時間をとってお話し合いをしませんか?」
 
 
   リスケや業者さん・大家さんへの支払いの
   対策をして資金に余裕ができたからといって、
   それを広告費に使ってしまっては何の解決にもなりません。
   広告は有効な売上向上対策だとは思いますが、
   その前にやっておかなければならないことがあるのです。
 
 
再度申し上げますが、リスケをして余裕が出たのでということで、
その資金で集客のための広告をすると、間違いなく失敗します。
 
広告という活動には成功も失敗もあります。
ところが、広告する方としては「広告をすれば必ずお客様が来る」
と期待してしまうのです。
 
その期待通りの成果が出ればよいのですが、人間の欲というものは
限界がありません。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-029

「そんなこと受けてくれます」
 
「わかりません。でもやってみる価値はあります。貸店舗であれば借りるときに
敷金とか保証金を支払ってあるはずです、家賃の何ヶ月分とか言ってね。ですから、
その範囲内であれば、大家さんの利益は担保されているはずです。ですから、
払えないといっているのではなく支払期日を延ばしてくれということはお願いしても
悪いことではありません」
 
「なるほど・・・」
 
「勘違いしないでください。これは偉(えら)ぶって言うことじゃないのですよ。
あくまでも“お願い”です。申し訳ないという気持ちを心に持って話をしてみてください」
 
「了解しました」
 
「元気が出てきましたね。声が明るくなってきましたよ。いつもそんな明るさを心
がけてください。悩みは外にでますよ。お客様は暗い人より明るい人に魅力を感じ
ますからね」
 
 
これは本当の話です。
いろいろな問題を心の中に溜め込んでそれを抑えきれずに顔や態度に出してしまって
いるオーナー料理人さんが経営している飲食店はやはりヒマになっていきます。
 
人間ですから、生きていればいろいろな悩みはついて回ります。
しかし、それを顔や態度に出すことなく明るく接客しているお店は繁盛していきます。
人間は、暗いより明るい、恐いより優しい、つまらないより楽しい、頼りないより頼り
がいがある、心が浅いより深い、不安より安心・・・といった当たり前の方に魅力を
感ずるものです。
ましてや、ただモノを買うだけのお店ではない飲食店では、このような接客する側の
表情が大きく影響する
のです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-028

この飲食店にとっては都合のよい理屈は、私が過去30年間飲食店と取引をする業者
としての経験から申し上げられることです。
納品業者にとっては取引先が成長して大きくなってくれるほどうれしいことはありません。
誰しも初めは小さなお店からスタートします。
「信用も看板もないのだから、有る時払いの催促なしだ」なんて冗談から取引したお店が
どんどん大きくなって、それにつれ取引金額も大きくなって行く経験を私は過去に何度か
させてもらいました。
業者さんの中には、このように“お得意様を育てる”ということを大事な仕事にして
くれている人も存在しています。
もっとも私の場合は、大きくなったら小さかった時のことを忘れて、一段上の問屋と
直接取引をし始められてしまったという経験もしましたけど・・・。
 
 
「具体的には、どうすればいいのですか?」
 
「銀行より簡単です。まず取引金額の多い順、または信頼関係が深い順に電話をして、
そこの責任者に直接会ってください。そして、お店のこれからのやり方などを話し、
でも今はつらい時期なんだ、ついては今後の支払い条件を1ヶ月繰り延べていただきたいと、
素直に頭を下げてお願いするのです」
 
「それだけで了承してくれますか?」
 
「くれるところとくれないところがあると思います。それは業者さんの考え方もあり
ますし、相手がご主人をどれだけ信用しているかという程度にもあります。しかし、
『銀行より簡単だ』といいましたのは、受けてくれなければ業者を変えればいいのです。
銀行はそういうわけにはいきませんが、業者さんであれば、同じものを扱っている業者は
いくらでも探すことはできます」
 
「わかりました、やってみます。で、大家さんというのは・・・?」
 
「ええ、ご主人のお店は貸店舗ですので、家賃の支払いがあると思ったからです」
 
「ええ、毎月25日に振り込むということになっています」
 
「その家賃を1ヶ月間遅延することをお願いして許してもらうのです」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-027

このような習慣を“自転車操業”というのですが、当の本人は、それが習慣に
なっていますので当たり前と感じているようです。
 
この習慣の悪い影響は繁盛月の翌月に現れてきます。
たとえば12月。
どの飲食店も12月はかき入れ時。当然原材料の仕入金額もかさみます。
ところが、そのかさんだ仕入金額を12月よりも少ない1月の売上の中から支払おう
とするので、苦しくなるのは当たり前ということになります。
 
それを前もってわかっている人であれば、12月の売上の中からその分をプールして
おくのですが、どうもそれができない人たちが多いのです。
レジに貯まってくる現金はすべてが儲けのような感覚なのでしょうか、売上が多いほど
その月に使う金額も多くなってしまっているようです。
 
 
「わかりました・・・」
 
「何か、まだ不安があるような返事ですね」
 
「ええ、ちょっと・・・」
 
「よく聞いいてください。料理店を経営されているご主人さんとお店に材料を
納品している業者さんとは、考えてみれば一心同体なんですよ。お店が繁盛すれば
するほど業者さんも儲かる、お店が繁盛しなければ業者さんも経営は厳しくなる。
そんな関係なのです。そんな関係ならば業者さんはご主人のお店ができるならば繁盛
してもらいたいと思っているはずです。ましてやご主人のお店が廃業でもしようものなら
大変なことだと思っているはずです」
「ええ、たしかに・・・」
 
「そうであれば、今は苦しいけれど、明日の繁盛店を目指しての努力をしようとする
ご主人に、業者さんが協力をしてくれないはずはありません。もっとも、すべての業者
さんが一律にこのような考えを持っているとは思えませんが、ご主人と業者さんとの
今までのお付き合いからの信頼ができていれば、きっと協力をしてもらえるはずです」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-026

リスケの交渉がまとまったとしても、リスケの実行には多少の時間がかかるものです。
契約書を再度取り交わした翌月からが通常なので、交渉している月の支払いを止める
ことはできません。

仮に、この支払いを遅延でもしたらせっかくのリスケの契約も反故になる危険性も
なくはありません。
 
 
「ご主人、今月の仕入れの支払いはどのぐらいあります?」
 
「えー、30万円をちょっと切るくらいです」
 
「その30万円の支払いを1ヶ月延ばせますか?」
 
「えぇぇぇ! 業者に待ってくれと言うんですか? うーん・・・」
 
「全部の業者さんに待ってくれと言うわけではありません。その中の主要な業者さんの
支払いを延ばしてもらうのです。たとえば、お酒屋さん、肉屋さん、魚屋さん、
八百屋さんといったところです。それと業者さんではないのですが、大家さんへの
家賃も延ばしてもらえればありがたいですね」
 
「そ、そんな。そんなことできますでしょうか? 次から売ってくれなくなって
しまわないでしょうか?」
 
「そりゃ、黙ったまま払わなければ、怒りますよ。でも、ちゃんと礼を正して協力を
お願いすれば大丈夫、待ってくれます。月末の支払日までまだ2週間ほどありますから、
すぐにお願いしてください」
 
「えぇぇぇ、すぐに、ですか?」
 
「そうです、すぐに、です。早ければ早いほどいいです」
飲食店の仕入れの多くはお酒類や食品などの原材料です。
そして、その取引の方法は月〆での支払いという、いわゆる掛取引が一般的です。
“月末〆の翌月○日払い”という取引形態が多い中でも○日というのが月末日という
ケースが圧倒的に多いと思われます。
 
本来であれば、当月の売上に要した原材料の仕入金額は当月の売上金から支出するの
ですが、この月末〆というシステムは、先月の仕入金額を当月の売上金額の中から
支出するという習慣ができてしまっています。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-025

   リスケの交渉がうまく運んだとしても、
   交渉した月からの実行は望めません。当月の返済は
   していかなければならないのです。資金繰りは当月も
   変わらずにくるしいのですから、その対策を急いで
   しなければなりません。
   支出が多いのは掛け仕入れの支払い金額と家賃です。
   そこで、この2つの支払いの繰り延べを交渉します。


P24
「もしもし、やっぱり言われたとおり、ダメでした。理由はまだ返し始めて
3ヶ月目なので、この状況だと上(上司)には提出できない、ということでした」
 
 
リスケの交渉を銀行に開始して3日目のこと、彼からの電話でした。
 
 
「そうでしたか、ご苦労さまでした」
 
「でも、話はよく聞いてくれました。こちらの要望には応じられないけど、
『お店に食べに行くなどの応援はさせてもらいます』なんて言ってくれました」
 
「それは上出来でしたね。半分愛想と考えても、うれしい言葉でしたね」
 
「はい。それと、先の銀行の方なのですが、今日電話があり、保証協会の承諾が
おりたという話でした。あとは契約書を作成しますので来てくださいということ
でした。それと、政府系から保証人に電話があったそうです。話からすると、
ここもOKのようでした」
 
「よかったですね。これで月々10万円ちょっとは楽になりますね」
 
「はい。でも、『今月分には間に合わないので支払ってください』ということでした」
 
「それは、そうですよね」
 
「それが、その今月分なのですが・・・」
 
「苦しいですよね」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-024

「そうですか、わかりました」
 
「そう、がっかりしないでください。もしかするともしかするかも知れないですから、
決して手抜きをしてはダメですよ。説明はちゃんとしてくださいね」
 
「すみません、つい・・・」
 
「がんばって! まだまだこれからの道のほうが大変なんですよ」
 
 
自分をわかってもらうための努力をあまりしないというのは料理人さんに多く
見られる特徴と以前から感じていました。
「オレの料理がわからないのは食べる方に問題がある」と思っているのでしょうか、
あまり自分から調理の仕事のアピールを研究している人は少ないようです。
 
お料理についても、「食べてもらえば、オレの腕はわかるはず」といっている
料理人さんを見かけるのは、このアピールの不得意さにもあると感じています。
 
お料理を注文するお客様は、食べる前に“おいしそう”と感じたからこそ
“食べたい”
と思うのであって、食べる前に“わからない”では“食べたい”という
気持ちにはならないはずと思うのですがね・・・。
 
銀行の交渉とお料理のアピールとはまったく関係がないように思えますが、自分の
ことを他人にわかってもらうという思考からすれば、どこかでつながっているもの
ではないでしょうか。
たとえ銀行のリスケ交渉が、いろいろな障害によって不成立に終わったとしても、
自分をアピールするという貴重な体験になると私は考えています。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-023

ひとつの関門を潜り抜けたという自信でしょうか、大石さんの声は、
何かとっても明るく聞こえました。
今まで大石さんの環境からすれば、頭を下げて、そしてちゃんと筋道を立てて
説明してお願いするなんてことの経験はなかったと思いますので、銀行の玄関を
入るときは、足がすくむ状況であったと推察します。
でも、それを見事にクリアした彼には、なんて言いますか、ひとつ大きな魅力を
発見したという思いがしました。
 
そして2時間をちょっと過ぎた頃、彼から再度の電話がありました。
 
 
「終わりました。ここも前向きに検討してくれるそうです。でもやっぱり
保証協会の承認が必要だから、と言われました」
 
「想定内の言葉じゃないですか。大丈夫です。窓口の担当者はご主人を好意的に
みてくれたと思います。きっと保証協会も承諾してくれます」
 
「はい、そうなってもらえればありがたいです。で、もう一行あるのですが、時間が
ありませんので後日ということでもいいですか?」
 
「かまいません。でもあまり日をあけないで、一気に交渉してみてください。でも、
後の一行はまだ借入をしてからそんなに経っていない銀行でしたよね」
 
「ええ、そうですが」
 
「たぶん、交渉しても返済期間のことを取り上げられて、断られる可能性が高いです。
ですから、ここは話だけをするという気持ちで望んでください」
 
「じぁあ、行っても無駄じゃないのですか?」
 
「いいえ、将来ということもあります。それにお金を借りているということは
同じですから、貸主の方には平等にあなたが将来をどのように考えているかという
ことを伝えておくことは必要です。 “話しても乗ってもらえないから話さない”
という態度ではいけないと思いますよ」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-022

そのとき、いつでも近くにいて相談できる人がいると心強く、はじめの一歩も
踏み出すことができるようです。
私の仕事は、一人ぼっちになりやすいオーナー料理人さんの背中をおしてやる
ことと、いつも側にいるという安心感を持ってもらうことなんだと、この時、
思ったのです。
 
 
   リスケの交渉にはオマケがついてきます。
   それは自分の考えを相手に上手に伝えるという能力が
   身につくというオマケです。
   料理人さんには一番不足しているものが自己アピール力
   だと思っています。
 
 
さて、それから1週間ほどたったある日、この料理人さんから電話がありました。
 
「今、政府系の銀行にいってきました。“案ずるより生むが易し”と言うんで
しょうか。初めはドキドキものでしたけど、結局は応じてくれるそうです。
ただし保証人に連絡して承諾してくれたらば・・・って言っていました」
 
「お父さんとお兄さんのほうはどうしましたか?」
 
「はい、バッチリです。今までの数字を正直に話し、これからはこのように対策
を講じてがんばるので今回はよろしく頼む、ってお願いしてあります。
『わかった。がんばれよ』って言ってくれました」
 
「じぁあ、大丈夫でしょう」
 
「はい、ではこの足で民間の銀行に行ってきます」
 
「すごいやる気ですね。銀行の窓口での口上はわかっていますか?」
 
「はい。だいだいは・・・、“政府系にも相談し、受けてくれるようです”
と言うのでしたね」
 
「ええ、そうです。このような意味のことを話してください」
 
「わかりました。じゃあ、また、えーと、あと2時間ほどしたらまた電話します」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-021

自分が外で飲み食いする費用はすべて“接待交際費”と思っているようです。
中には自分のお子さんの結納の費用まで接待交際費として計上してあったという
経験もあります。
それで、いつも月末になると「苦しい、苦しい」と言っていました。
 
自分が稼いだお金を自分がどのように使おうが、私のような他人がとやかく言う
こともないわけですが、資金繰りを改善するとなれば、これは話が違います。
 
お店のお金も家庭のお金も同じ財布というのが個人経営の特徴ですので、支出を
減らすということは家庭内の支出にも緊縮対策をとる必要があると思っています。
 
ましてや自分の遊びや贅沢で他人を巻き添えにするのはもってのほかですし、
またそんなことではリスケ交渉でも銀行は応じてはいただけません。
 
事業を再建するためには、リスケという手段は有効なのですが、それよりも先に
自分の身から正すということが大事だということを自覚しなければならないと
思います。
 
 
「そんなところです。そうですよね、知らず知らずに無駄遣いをしていたという
ことですね」
 
「いいえ、けっしてパチンコやタバコに使うお金が無駄遣いと断定しているわけでは
ないのです。しかし、今はダメ。苦しいときはそれなりに・・・、ということです」
 
「わかりました。そうします。では、早速、明日にでも連帯保証人の兄と親父の
ところへ行って話しをしてきます。そしてそれから銀行にも・・・」
 
「そうしてください。またわからないことがありましたら、いつでも電話してください」
「はい、そう言ってもらえると心強いです」
 
 
人間というのは、今までやったことのないことをやるとき、一人きりですとなかなか
腰が上がらないものです。
「やらなければ・・・・」とは思うのですが、その一歩が踏み出せないのです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-020

「やらない、と言えばウソになります。でも、ほんの暇つぶし程度ですよ」
 
「ええ、そうだと思います。で、暇つぶしということで月にどのぐらい使っています?」
 
 
パチンコをやっている料理人さんは多いというのが私の30年の経験から言える
ことです。料理の修業時代に先輩から習ったものなのでしょうか、そして夜の商売と
いうことで昼間の時間をもてあまし、暇つぶしにと気軽に考えてのことでしょうか、
とにかく10人いたら8人はパチンコ店の繁盛に貢献しています。
 
ところがこの暇つぶしが、最近では暇つぶしとは言えないほどのお金を浪費するという
バクチになっているようです。
日銭が入るオーナー料理人さんは特に気をつけなければいけません。
「ついつい・・・」という気持ちが大きな出費になっていることもありますので・・・。
 
 
「ねえ、ここだけの話でいいですから、どのくらい使っているんですか?」
 
「ええ、儲かる月もあったり、突っ込んでしまった月もあったりですが、通算すると
月3万ぐらい負けている計算ですかね」
 
「そうですか。じゃあ、タバコとパチンコで月に5万円といったところですかね」
 
 
この5万円はどういうわけか生活費からの計算には入っていないのが通常です。
生活費はその都度、家に入れていますので、このような嗜好品やギャンブルに関しては、
お店のレジの現金を拝借するという形式になっていることが多いものです。
このようなタバコやギャンブルにお金を浪費している場合には、まず会計上の
現金残高と実際の残高が合っていません。
  
大石さんのことではないのですが、昔、大変親分肌のあるオーナー料理人さんが
いまして、自分の同輩や後輩たちと飲食をする場合にいつも全額自分が負担を
しているなんてこともありました。支払い項目はもちろん“接待交際費”です。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-019

銀行のリスケは以上ですが、次にご主人の生活費についてなんですが、いいですか?」
 
「はい」
 
 
   リスケの次は生活費の削減です。とは言っても子供さんを
   抱えた家庭の生活費を削ることはなかなか難しいことです。
   ところが、それでも意外なところにムダを発見する場合が
   あります。それは嗜好品とギャンブルです。
 
 
「月当たりの生活費が住宅ローンを入れて35万円ほどということだったのですが、
お子様はいらっしゃいますか?」
 
「はい、小学校と幼稚園の子供が2人います」
 
「なるほど、それで住宅ローンを支払って教育費を入れると大変ですよね?」
 
「ええ、でも女房がパートで働いてくれているので・・・」
 
「なるほど、夫婦でがんばっているのですね。でね、言いにくいのですが、
さっきから吸っているタバコ、1日に何本ぐらいですか?」
 
「ええ、すみません。1日に2箱ぐらいですか・・・」
 
「ほぅ、それでもひと月となれば結構な金額になっていますよね。2万円弱
といったところですか?」
 
「そんなところです」
 
「それと、これは私の勝手な推測ですが、パチンコはやりますか?」
 
「えっ、何でですか?」
 
「いえ、だから推測って言いましたでしょ。ほら、料理人さん達って結構やっている人
が多いって知っているものですから、この際、聞いといてみようかな、なんてね・・・」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-018

「それで、交渉の際には何を言ったらいいのでしょうか?」
 
「そうですよね。では、今のお店の経営状態を正直に話してください。
それもこのコンピュータに入力してある会計データの残高試算表を一緒に見せ
ながらです。そしてこれこれの事情で現在の返済が難しいこと。しかし、今後
このような方法で改善を計画しているのでぜひ協力してもらいたい、ということを
誠意を持って話してください。そうそう、ネクタイを締めていく必要はありませんが、
服装はピシっとして出かけるようにしてください」
 
まず、銀行にはお願いに行くということを念頭においてください。
銀行側がこちらのことを十分にわかってくれるように話すことが大事です。
このとき、すでに連帯保証人には実際に会って話をしてあり、協力をしてもらえる
約束ができているということも付け加えてください。きっと役に立つと思います。
 
服装も大事です。
人は見かけで判断されてしまうものです。
しっかりとした服装からはそれなりのものがうかがえます。
銀行の窓口での信用は、まず服装からといってもよいくらいです。
 
 
「私に、できますかね?」
 
「大丈夫です。ひとつの銀行が終わったら、私に電話してください。次の指示を
しますから・・・。私が同席するといいのですが、それはかえってご主人の信用を
減らすことになってしまいますから・・・」
 
「わかりました。やってみます」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-017

「お願いします。ところで、今回この3つの銀行と交渉をしてもらうのですが、
まず、ここから行ってください」
 
「えっ、どうしてですか?」
 
「ええ、ここは政府系の金融機関です。このようなリスケの話は、一概に決め付ける
ことはできませんが、一般の民間よりも政府系の方が通り易いのです。そしてまずは
ここの感触を確かめてから、次の銀行に行って『この政府系の金融機関にもお願いして
ありまして、そこでは前向きに検討してくださるという話でした』と他の銀行にも
お願いしているということを言ってください」
 
 
   金融機関へのリスケを交渉する場合には、
   受けてもらいやすい機関から話を進めていきます。
   そして初めの機関から色よい返事をもらえたら、
   次の機関にはその事実を話して相手が「自分のとこ
   だけではないんだ」と思ってもらえるようにします。
   他行がしなくて自行だけという構図をつくらない
   ようにしてください。
 
 
リスケを交渉する場合には、どういうわけか民間より政府系の方が交渉が楽に進む
ようです。民間の場合には、たいていは保証協会という政府系保証団体が借入の際の
保証に入っていますので、民間の金融機関としてはまず保証協会の許可をとるという
作業から入ります。ところが政府系金融機関には保証協会が絡んでいませんので、
連帯保証人の承諾があればまず十中八九、リスケを承認してもらえます。そして、
政府系金融機関が前向きだということで民間も前向きになってもらえるという構図が
できあがるわけです。
 
飲食店の開業では多くの経営者が政府系の金融機関を利用し、さらにそれで不足
している場合に民間を利用するというケースが多いので、まずはこの政府系から交渉を
することを強くお勧めします。
 
 
   リスケの交渉とはお願いをしにいくということです。
   相手の気持ちになってみれば、ただ「待ってくれ」では
   受けようがありません。待ってもらいたい理由と今後の
   返済への姿勢をはっきりと伝えることが大事です。
   ウソはダメです。正直に話してください。将来の話は
   あくまでも計画ですから、結果実現できなくてもかまいません。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-016

「どのくらいですか?」
 
「ウーン、ご主人の交渉次第ですが、長くて1年間です。でも1年間猶予が
与えられれば、お店の経営を立て直す時間がとれますよね」
 
「はい。今よりもずっといいです」
 
「じゃあ、早速やりましょう。では、その借入の際の連帯保証人はどなたですか?」
 
「えっ、連帯保証人ですか? 私の兄と親父ですが・・・」
 
「では、銀行と交渉する前に、連帯保証人であるお兄さんとお父さんに、
今のお店の経営事情を話し、そのために銀行の返済を一時ストップしてもらう
交渉するが、その際には協力してもらいたい旨を電話ではなく、ちゃんとお会いを
して頼んでください」
 
「兄と親父に話すのですか?」
 
「そうです」
 
 
銀行の元本返済を一時ストップすることを“リスケジューリング”と言います。
“リ”は再度という意味、“スケジュール”は計画という意味。
これを略して“リスケ”と呼びます。
 
このリスケについては、指導書としていろいろな書物が出版されていますが、それを
読んでみても、連帯保証人にまずは協力をお願いしろ、とは書いてありません。
連帯保証人は個人店舗の場合は、どうしても身内の人がなっているので、協力して
もらえるのは当たり前なのでしょうが、本筋から言えば、借主と同じ責務を負っている
連帯保証人にしっかりとした説明をして協力をお願いしておく
べきものです。
 
そして、そのために自分のお店の将来の経営計画を立てるということは、そのまま
銀行の窓口で交渉をするためのリハーサルという役目にもなるのです。
 
 
「わかりました。明日にでも行って話してきます」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-015

しかし、店が個人経営であり、しかも住宅ローンも抱えているということであれば、
このあたりも頭の中の計算に入れておかなければ分析のしようがありません。
 
他の会員さんの場合では生活費が月当り40万円以上かかっていたので尋ねたところ
3人の子供さんが私立の学校に通っているので教育費がかかるということでした。
そのような家庭に「店が大変だから学校を辞めさせなさい」とは言えません。
こんな事情も頭の中に入れておかないと、改善対策の話にズレが起きてしまいます。
 
 
「銀行の返済金なんですが・・・、このようになっているようです」
 
「そうですね、合計で約15万円の元本返済ということですね。じぁあ、これ銀行
にお願いして返済を一時ストップしてもらいましょう」
 
「えっ、そんなこと、できるのですか?」
 
 
   銀行の返済元本を一時的に猶予してもらえれば、
   月々の資金繰りが楽になるはずです。よく言われている
   リスケジューリングという方法です。
   しかし、これも話し聞くように簡単に運ぶものでは
   ありません。誰でも同じようにできるものではありませんし、
   そのための手順というものもあります。
   大切なのは人間的な信用力としっかりとした将来にむけての計画、
   そして借入の際に協力してくれた連帯保証人の承諾です。
 
 
「預金通帳を見る限りでは、今まで返済日には返済をしているようですし、
また借入日から1年以上経過しているこれとこれはストップできる可能性はあります。
ただし、ここは借りてまだ3ヶ月ですから無理かもしれませんけど・・・」
 
「でも、それだけでも12万円ほど楽になります」
 
「そうですよね。でも、ずっとストップというわけではありませんよ」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-014

このように数値に表れる要因や現れない要因を全部を合わせれば、ひとつのお店を
支えている経営要素というものは300項目以上にもなることがあります。
 
これらの経営要素は、当然、お店によってまちまちということになります。
ですから「あの繁盛店のやり方を取り入れよう」ということで他店の成功法則の
表面だけを真似しても、当然うまくいくはずはありません。

 
世間には、繁盛の方法としてさまざまな情報が氾濫していますが、その情報の
ほとんどは表面的なテクニック論でしかありません。
そのテクニックがウソだとは申しませんが、そのテクニックの裏には見えざる
経営要素があってはじめて成果をあげているのです。
ですから「あのお店は○○という方法で繁盛するようになったから」という話を
まともに聞いて真似をすることは愚かなことと言わざるを得ません。
同様に「売上を上げるためにはまずは集客だ」という単純な発想が、かえって
廃業への道を選択している危険がある
こともこの際ですから知っておいて
もらいたいのです。
 
 
   「資金繰り」というお金の問題を解決しようとするの
   であれば、長期的には収入の増大、短期的には支出の
   削減ということになります。
   資金繰りに余裕があれば収入の増大に向けての方策だけを
   考えればいいわけですが、そうでない場合には一にも二にも
   支出の削減対策をしていかなければなりません。
   支出とは会計上の費用だけではありません。お金が出でいく
   すべての項目を調べることです。
 
 
「まず、今すぐ奥さんに連絡をして先ほどの銀行返済表を探してもらってください。
そして銀行ごとの毎月の返済元本を知らせてもらってください」
 
「わかりました、すぐに電話します」
 
「あっ、それと生活費のことも聞いていきますけど、その辺のことも奥さんに
伝えておいてください」
 
 
経営者の生活については、本来、他人である私が口をはさむことではありません。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-013

「ご主人、何をめげているんですか? ご主人だって夢をもってお店をはじめた
のではなかったのですか? だったらその夢をつかむまでがんばってください。
もしよければ私もお手伝いしますから」
 
 
こうして大石さんは当研究会の会員になりました。
私と会員さんとの出会いは、この大石さんのように自分の力ではどうしてよいの
かがわからなくなった時点が多いのです。
 
 
   利益はどこから生まれてきるのか。
   つまり利益の源泉という考え方が必要です。
   売上を上げるだけではなく原価率を下げること
   経費を絞ることなど、いろいろな方策で利益を
   つくっていくのです。これを明確にするためには、
   会計帳簿の数字とじっくり向き合うことです。
   そして数字をつくっている要素を分析していきます
 
 
どうしていいのかわからなければ、わかるまで考えるしかありません。
わかるためには、経営の全体を、構成している細かな要素に分けて、その現状
を正しく捉える
という、いわゆる分析といわれる作業が必要になります。
 
大石さんの場合であれば、売上を構成する要素である“客数と客単価”、さらに
粗利益を生み出す要素である“価格決定と原材料”、そして売上に対する経費
ひとつひとつについて費用対効果を調べていくのです。
 
数値に表れてこない要因もあります。
料理人さんのキャリアや料理の腕前、人材といわれるスタッフの能力、原料の品質を
支えてくれている関係業者の専門知識などは数値として表すことはできません。
しかし、これらの要素は売上のためには最も重要視しなければならない要素になってきます。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-012

「ご主人、簡単に言いますと、このお店の資金繰りを楽にするには、最低でも
この経常利益というところの金額が55万円にならないといけないのです。ですから、
この金額を確保するために売上を上げることや原価率を下げたりすること、
そのためのメニュー価格の改正にも手を いれないといけないかもしれないですね。」
 
と、私はどこの経営コンサルタントでも言える当たり前の診断結果を話しました。
 
 
「えぇぇ! 55万円ですかぁ! それじゃあ、もしそれができたとしたら税金も
それなりに払わなくちゃならないのですよね」
 
「そうです。ですから、本当は55万円の利益では納税する時点には足りなくなって
しまうはずです」
 
 
大石さんには可愛そうな話なのですが、日本で商売をするのであれば納税という
制度を無視するわけにはいきません。
そして彼ように開業資金の大部分を銀行の借り入れでまかなっている場合には、
この返済元本は、理論的には納税後の余剰利益で支払わなければなりません。
当然ながら、返済金が多ければ、その分納税金額も多くなります。
 
実際には、この借入元本に対応する費用勘定として“原価償却”という科目が
あるのですが、ここにも「エッ!」と驚く税を徴収する側の謀略があるのですが、
ここでは省略します。
 
 
「あのう、結局どうすればいいのでしょうか? どうすれば楽になるのでしょうか?
やっぱり売上ですかね? もっと広告をしてお客様に来てもらわなきゃダメって
ことですよね。でも、あと35万以上の利益をだすということは、売上で、
えーと・・・。でもそのためには広告費用が・・・」
 
 
チラシ広告を作り方を教わった大石さんはやっとの思いで月間利益を20万円計上
できるようななったわけです。
しかし、それじゃまだまだ足りないということがわかった今、その3倍もの利益を
どのようにして出していったらよいのかまったくわからなくなってしまったようでした。
「飲食店の経営って、こんなに大変だったのか!つらい修行時代に夢にまで見たのに・・・」
 
ポツっと履いた言葉は自分だけの力では、もうどうしようもないといった様子が
うかがえました。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-011

経営者の報酬というものは法人格であれば“役員報酬”という科目によって
経費一覧に計上されているのですが、個人経営となると経常利益が経営者の
報酬ということになります。
それだとわかりにくいということで“店主勘定”とか“店主借り”といった
科目で経費の欄に計上しているのが一般的ですが、大石さんの場合にはそれを
していませんでした。
 
 
「生活費ですか・・・? 自宅のローンもありますので、35万円ほどかかります。
それと、銀行の返済金は、えーと、通帳を見ますと全部あわせると18万円前後ですね」
 
 
やっぱり、です。
損益計算書には書かれていない支出の金額が約53万円あるのです。
これでは月に20万円の経常利益が上がっていても、30万円強ほどのお金が毎月足り
なくなって当たり前です。
私は、なぜ毎月お金が足りなくなってしまうのか、ということを説明することに
しました。
 
 
「ご主人。確かにここに20万円の利益は出ていると記載されていますが、
この損益計算書という表にはご主人の生活費である35万円と実際に銀行に返済している
約18万円のうちの返済元本分が経費に入っていないのです」
 
「どういうことですか?」
 
「えーと、つまりですね・・・」
 
と詳しく説明しようと思った私はここで考え込んでしまいました。
この理論を説明したところで今の経営が数字の解釈だけで好転するわけでも
ありません。
それよりも、「現在20万円の利益が出ているからいいんだ」という勘違いを先に
気づいてもらうことが先決だと思いました。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-010

「えーと、ひとつお尋ねしますが、このお店の開業資金はこの帳簿を見ると
銀行からの借り入れが大部分になっていますが、銀行の返済表ってあります?」
 
「それって、銀行へ毎月返済する金額が書かれている表みたいなものですか?」
 
「そうです。帳簿には借入の合計金額しか見ることはできませんが、複数の銀行
からの借り入れならば、銀行ごとにあるはずなのですが・・・」
 
「えーと、それはきっと女房が保管してあるはずです」
 
 
たぶんそんなことだろうと思っていました。
おそらく本人は銀行返済表など届いたときにしか見ていないな、と推察しました。
 
 
「わかりました。今は結構ですから調べておいてください。今日は売上の推移を
見てみましょう。 ほぉう、以前よりも良くなっているじゃないですか?」
 
「おかげさまで、そうなんですが・・・。でも、まだ月末になるとお金が足らん
のです。このようにちゃんと利益はででいるんですが・・・」
 
 
会計帳簿の集計表というものを見てみると、確かに損益計算書という集計表
には20万円ほどの経常利益が計上されています。
 
 
「利益がちゃんと出ているのにお金がないということは・・・。 んッ? あれ!
ご主人の毎月の生活費はどうなっています? それと、銀行返済表は後でもいい
ですが、毎月いくらほどの返済をしているのか、知っていますか?」
 
 
   ある期間の営業上状況を数値で表すのが損益計算書
   という集計表です。しかし、個人事業の場合には
   集計表の経費欄には経営者の報酬は書かれていません。
   売上から仕入プラス経費を差し引いた経常利益が経営者の所得
   ということです。そして、この損益計算書には借入返済元本も
   書かれていません。返済は利益の中よりすることになります。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-009

   資金繰りが苦しいのであれば、まずは現状分析が最初の段階です。
   当たり前ですが、苦しいのは収入と支出とのバランスが
   とれていないからなのです。
   そこで収入を増やそうと考えて対策を講じるよりも、
   重要なことはまず支出をどれだれ減らせるのかという対策です。
   お金の問題の原因は会計帳簿の中に必ずあります。
 
 
「こんにちは」
 
「あっ、どうもすみません。わざわざ来てもらって。それにこんなにすぐに・・・」
 
「いいえ、私にとってはいつものことですから・・・。それより、早速よろしいですか?
まず、会計帳簿のことを聞きたいのですが・・・」
 
早めの手当てが必要だと思っていた私は、早速本題に入らしてもらいました。
 
「ええ、帳簿はこのノートパソコンを使っています。ソフトは弥生会計です。でも、
実際に打ち込んでいるのは女房で、私はなにも・・・」
 
「いいえ、誰が入力してもかまいません。でも、それにしてもパソコンで帳簿とは
たいしたものですね。助かります。ではちょっと見せてもらっていいですか?」
 
 
「どうぞ」
 
 
会計帳簿を経営者本人が自ら記入しているお店はきわめて少ないのが通常です。
オーナー料理人であれば、日常の主たる仕事は料理づくりということですから、
帳簿というのは信頼できる第三者が当たり前なのです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-008

しかし、今ここにおいて毎月の資金繰りに窮している今回の大石さんのような
お店に、「広告での集客は時間とコストがかかるからね。そのうちにコツが
掴めるから・・」というのは酷というものです。
 
  
   資金繰りが苦しいのは利益が出ていないから。
   そして、利益が出ないのは売上が少ないから。
   そして、売上が少ないのはお客様が少ないから。
   そして、お客様が少ないのはまだ知られていないから。
   だから、チラシでも何でも広告をしなくては、
   広告こそが今の窮地を脱する手立てだ。

 
このような思考順序でお店の経営を考えていくのは、一見当たり前のような
気がしてきます。でも、ここに大きな落とし穴が待っています。
  
広告宣伝は、実際にやってみると時間とコストがかかってしまうのです。
 
現在、資金繰りに苦しんでいるお店には、それを受け入れる体力はありません。
いや、もしかすると廃業へと転げ落ちていくときの背中を力いっぱい押す役目に
なってしまうことだってあるのです。
 
「やり続けていればいつか何とかなる」と信じ続けていて玉砕してしまったのでは、
“笑えない話”になってしまいます。
今回電話があった大石さんは、その笑えない話の一歩手前でした。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-007

「いいえ、私が聞いているのは売上ではなくて利益なのですよ」
 
「利益ですか? ・・・?」
 
「いや、すみません、今はいいです。それよりもっと詳しく聞きたいので、
ご主人、時間あります?」
 
「はい。今からでもかまいません」
 
「わかりました。すぐに伺います。その時、一応会計帳簿も見せてもらいたいので
ご用意しておいてください」
 
 
「チラシ広告のつくり方を教えてやってくれ」という友人の話にそのまま応えて
しまったことを少し後悔しました。
いくら安上がりのチラシ広告作成であったとしても、お金をまったくかけない
というわけにはいきません。
1回あたりの宣伝費はたぶん2~3万円にはなっているでしょう。
それに、毎度毎度、広告費をペイできるだけの売上利益を出せるかといえば、
そんなに甘いものではありません。
 
広告には失敗がつきものです。
広告というのは挑戦しては失敗し、また挑戦しては失敗する。
そんな試行錯誤の過程でだんだんに反応がとれる広告というもののコツがわかって
くるのが普通です。
 
時間とコストは思ったほど以上にかかってきます。
巷には、誰にでも簡単にできるような広告ノウハウが溢れているようですが、
それを真似て同じようにやったとしても、一度だけならまだしも、残念ながら
継続した成果は得られないのが現実です。
 
「成功ノウハウは成功者の数だけある」と言われていますが、広告の成功ノウハウ
もまた成功者の数だけ存在しています。
人様の成功ノウハウを勉強し体験することはとても大事なことなのですが、
自分なりの成功ノウハウを習得するには「失敗から学ぶ」という教訓も必要な
ことなのです。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-006

心なしか沈んだ声。
 
「チラシ、効果が出なくなってきたのですか?」
 
 
チラシのような紙媒体の広告宣伝の効果は、近年、非常に厳しい傾向にあります。
一度ぐらい反応がよかったからと言って、「よし、今回も・・・」と
やってみても、同じ反応は期待できません。
さらに、反応は配布する地域や時間帯によってもさまざまで、一回一回の
反応データをしっかりと計測して、対応策を考えていかないと、満足できる反応を
とり続けるのは難しいご時勢です。
 
私ははじめ、大石さんもきっとそんなことが原因でチラシでの集客効果が
落ちてきたのか? と思ったのでした。
 
 
「いいえ、そうではないのです。チラシを打てば、それなりの効果はあるんです。
ですからやらないよりはやったほうがいいとは思っています。ただ・・・」
 
「ただ、どうしたのですか?」
 
「ええ、ただ、広告をしてお客さんが来てくれても、肝心の売上にそれほどの
効果が表れないのです」
 
「ほう? それはどういうことですか?」
 
「実は、チラシを打った後の2~3日はいいのですが、それ以後の客足が元に戻って
しまうのです。だからいつもチラシを打たなければいけないような気がして・・・・。
それに、以前よりはお客さんが来てくれているのに、相変わらず資金繰りは楽に
ならないのです。チラシにも結構お金がかかりますので、かえって・・・」
 
「なるほど、確かにどんな広告もタダではないですからね。で、これが一番大事
なんですが、いったいどのくらいの利益があれば資金繰りが楽になるのですか?」
 
「ええ、売上にして、ですね・・・」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-005

   お客様が来店してくれないのはお店が知られていないから・・・。
   だから、チラシ広告でもすれば事態は良くなるはず・・・。
   広告はやればそれなりの反応があるけれど、
   儲かってきたという実感はありません。
   広告コストもバカにはできないくらいにかさんではきたけど、
   だからといって広告を止めればお客様の足が止まるのでは、
   と不安になってしまいます。こんな悩みを抱えている料理店の
   経営者さんからの相談でした。
 

電話が鳴りました。
受話器を取ると、電話をかけてきたのはある料理店のオーナーさんでした。
ここからは、仮にこの料理人さんを大石さんと呼ぶことにします。
 
「あっ、大石さん、こんにちは! その後いかがですか?」
 
大石さんは開店以来、売上が思うようにあがらずに毎月赤字経営で苦しんでいました。
開店時に20万円ほどの費用をかけて市内全域に折込チラシを配布し、その結果開店月
にはもくろんでいた数のお客様が来店してくれました。
しかし、順調な滑り出しと思っていた店舗経営だったのですが、翌月になると
お客様の足はパッタリと止まってしまい、お店は文字どおりの閑古鳥状態になって
しまいましたのです。
 
 
私は、「チラシ広告の作り方を教えてやってもらえないか」という友人の紹介で
とりあえず、なるべくお金がかからない自作のチラシの作り方と周辺地域への
ポスティング方法をお話させてもらったのです。
幸い大石さんの人柄もよく、チラシの反応も満足がいくものでした。
 
 
「やっぱり宣伝しなきゃダメですね。これからは定期的に宣伝活動をやっていきます」
と、ほっとしたような笑顔で話してくれたのはつい2ヶ月前のことでした。
 
「ええ、実は、今日は相談があって電話したのですが・・・」

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-004

55歳を過ぎ、子供たちも巣立っていき、自分の残りの人生を考えたとき、私は長年
お世話になった飲食業界に何かの恩返しをしていきたいと考えるようになりました。
そして考え付いたのが、繁盛店の経営者さんたちに教えていただいたさまざまな
繁盛のための知恵を整理し、それを体系化して研究し、それをわかりやすい形で
伝えることでした。
 
「料理職人さんがお店をやっても、うまくはいかない」
「飲食業界では、3年以内に新規のお店の7割はつぶれる」
 
このような話は、昔からよく耳にしていました。
しかし、「うまくいかない」にも「つぶれる」にも、それには必ず理由があます。
そして、当然、繁盛にも必ず理由があります。
それは、経営の“原理・原則”と言ったものかもしれません。
 
「うまくいかない」「つぶれる」のは、この“原理・原則”を知らなかったため
というのがほとんどだと思っています。
 
 
このレポートで、すべての原理・原則をお伝えすることは出来ません。
原理・原則を研究し、実践していただくことは、当研究会の基本活動です。
 
今回、このレポートでは、資金繰りに苦しみ悩んでいるオーナー料理人さんに
繁盛店までへの手順とその先にある大切な事柄を、ある仮の料理店の経過を例に
とりまして、出来る限りわかりやすく解説したものです。
 
このレポートの中には、私が繁盛店のオーナーさんたちに教えていただいた料理店
繁盛の心構えの一部もご紹介しています。
 
それは、安易な繁盛のテクニックではありません。
 
私は、それらの心構えを、悩んでいるオーナー料理人さんがいるならば、ぜひ活用
していただきたいと思っています。
もっと言えば、自分が考え付いた心構えだと言って、手柄にしてもらっても一向に
かまいません。
 
一つだけお願いできるとしたら、この心構えを活用したときに、このような
ことを研究している会があるんだ、ということを思い出していただきたいのです。
 
そして気が向いたら、また当研究会のウェブサイトを訪れてください。
 
さらにもっと言わせていただければ、当会の会員となって共に成功したときの喜び
を共有できれば願ったりと思っています。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-003

技術は人を創るということでしょうか、調理技術が上達するにつけ人間
としての器も大きくなり人生観についても卓越した考えをもっていた人たちが
いらっしゃったことを、今でも思い出します。
 
特に、『技を弟子に仕込む』ときの努力と情熱は、現在の一般社会には見られ
なくなってしまったものであり、職人の魂とも言えるものであったと思っています。
 
ところが、そんな料理人さんたちでも、自分のお店を持ち、経営者となって
しまうと、まるで赤子のようになってしまう人が少なからずいます。
 
お店を開いたもののお客様に来てもらえない、といった状況に陥ってしまうのです。
 
勤めていた時代には、自分の作る料理を食べに来てくれるお客様はいました。
 
だから、その自分がお店を持てば、同じように自分の作る料理を食べに来て
くれるお客様はいる、と思ってしまうのでしょうか。
 
しかし、残念ながら、どうやらそう簡単なものではないようです。
 
 
“料理づくり”と“お客様づくり”とはまったく別物です。
 
私は、そのことを料理店の経営者さんたちから、いつも聞かされてきました。
そして、繁盛店の経営者さんたちは、そのことを百もわかって経営をしていたのです。
残念ながら、調理場で仕事をしていた料理人さんたちの中で、それを知ることが
できた人はあまり多くはいないようでした。
 
 
「月末が近づいてくると、支払いのことで夜も眠れない・・・」
 
そんなオーナー料理人さんがいるとしたら、本当に残念な話です。
 
私は、前に話したように30年間、納入業者として飲食業に関ってきました。
言ってみれば、生活の糧を飲食業界から頂戴してきたわけです。
私には子供は3人いますが、その子供たちを育ててこられたのも飲食業界の方たち、
とりわけて、食材の発注をしてくれる最前線にいらした料理人さんたちのお陰だと
思っています。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-002

『飲食店繁盛経営の黄金法則』をご注文いただきましてありがとうございます。
 
『行列ができる店づくり研究会』を主宰しております江間久芳と申します。
ちょっと怪しげな名称の会ですが、会員であるオーナー料理人さんたちと相談した
結果、「ダサイけど、自分達の願望をズバッと表現している」との理由で名づけ
られました。
 
つまり、この研究会は、飲食店の中でも経営者が自ら調理を担当している、
いわゆるオーナー料理人さんたちが、お店を繁盛させるための方法を研究し、
それを共有していく会としてスタートしました。
 
“会を主宰する”と言いますと偉そうですが、私の仕事は会員であるオーナー
料理人さんが自分のお店で自分の夢を叶えるためのお手伝いをすることだと思って
います。
 
 
私は、過去30年の間、飲食店に食材を納める仕事に携わってきました。飲食店の食材
を取り扱っていますと、ほぼ毎日のようにお店に注文取りやら納入やらで
うかがうことになります。
 
当然、料理店の経営者さんたちともさまざまなことで話す機会も多くなり、
その話の中から、料理店経営の苦労や難しさ、そして何よりも飲食店としての
社会的な役割というものを教えてもらいました。
 
そこには飲食店として存続し続けるコツと言いますか、飲食店を繁盛させ続ける
ためにやるべきことがいっぱいありました。
 
 
もちろん、そのやるべきことはお店のスタイルや経営者さんの人柄により、
1つとして同じものはありません。
 
しかし、今になって、もう一度教えていただいたさまざまな方法を思い出して整理
してみると、その根本にあるものはそんなに多くのことではない、ということに
気がついたのです。
 
 
一方、経営者さんだけではなく、お店の調理場で働く料理人さんたちとも大変親しく
お付き合いをさせていただきました。
 
取引をしているお店の料理人さんたちはもとより、そのお付き合いから、さらに
和洋中の調理師協会さんともお付き合いをさせていただき、大変多くの料理職人さん
たちからもいろいろと学ばせていただきました。

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飲食店『繁盛経営』の黄金法則-001

「月末が近くなると、朝が恐い!」
どうすれば楽しく商売ができるのだと悩んでいる
オーナー料理人のための
 
飲食店『繁盛経営』の黄金法則
 
 
   お店がヒマだから・・・といって、
   すぐに広告で集客を狙ってはいけません。
   その前にやるべきことをやっておかなければ、
   自滅行為にもなりかねません。 
   飲食店を繁盛に導くにはテクニックよりも順番です。
   順番を間違えているから、
   いくら広告で集客しても繁盛店にはならないのです。