飲食店コンサルタントとして数多くの飲食店を見てきた宇井義行氏は、「飲食店の接客サービスの盲点は中間サービスにある」と言っています。
飲食店の接客サービスは、お客様を出迎え、席にご案内し、オーダーを取り、料理をお出しすれば終わるわけではありません。
料理をお出しした後でも、お勘定をしてお帰りになるまでは接客サービスは続いているのです。
お客様が楽しく過ごすためのフォロー的なサービス、これを宇井氏は「中間サービス」と称しています。
そして宇井氏は、その中間サービスについて次のように言っています。
「これがなかなにかできない。基本的にはお店の教育が悪いせいなのだが、ここを改善しない限り、本当にお客様に愛されるお店にはなれない」
どうでしょうか。
耳の痛い思いで読まれた方もいるのではないでしょうか?
一方、「いや、ウチはそんなドジはやっていない」と反論する方もいらっしゃると思います。
では、ちょっと見ていきましょう。
最近、積極的に追加オーダーを勧めるお店が増えています。
1回のオーダーでほったらかしにすれば、サービス不足と思われかねないし、少しでも客単価を上げて、売上に貢献したいからあって、やりすぎにならなければ悪いことではありません。
これは「アップセール」というちゃんとしたお店の戦略です。
問題は、追加オーダーを勧めるのが悪いのではなく、このようなアップセールを積極的にしておきながら、お客様側から追加オーダーがあったときに平気で見落としてしまうこと。
このようなことは、サービススタッフがお店から言われて仕方なくやっているというだけで、追加オーダーを取るサービスが中間サービスだという意識がまるでないことから起きることなのですね。
サービススタッフの大事な仕事とは、繰返して言いますが、お客様が楽しく過ごすためのフォローであるはずです。
そのための具体的な行動とは、お客様の動向に常に気を配っていること。
お客様のテーブルから心の目を離さないということです。
これを店内のサービススタッフ全員が、チームワークを組んで、効率よく実行していれば、お客様の合図を見逃すことは防げるはずです。
話は少し外れますが、お客様のテーブルを常に注意をし、お客様の食事の進行や、今お客様が何を欲しているのかということを的確につかむことを京都の花街では「座持ちが良い」という言葉で言っています。
おもてなしのプロフェッショナルである芸舞妓さんたちが、お座敷でお客様に行う中間サービスは、日本のおもてなしの最高峰ともいえるものじゃないでしょうか。
お客様たちのちょっとした合図にも常に気を配るとともに、一緒にサービスをしている同僚芸舞妓さんたちとの連携は、実に見事であるらしいのです。
日本人が最も好むものは、やはり日本に伝統的に伝わっている花街のおもてなしの姿にあり、それを受けるお客様たちは、無意識のうちにたっぷりと満足感を感じるのものなのですね。
もちろん京都花街でのおもてなしの演出のためには、それなりの教育訓練の仕組みがこの世界にあるからであり、通常の飲食店と比べるものもいかがなものかと思います。
実際問題、アルバイトさんやパートさんをサービススタッフに起用しているお店は多いのですし、お座敷といった限られたお客様だけに集中していればよいという環境ではない飲食店において、つねに目を離さないというのは不可能ですものね。
でも、言葉を誤解しないでもらいたいのですが、目を離さないとは、お客様をつねにじっと見つめていろ、ということではありませんよ。
ときどきチラッと目をやるだけでもいいのです。
サービススタッフ全員がそれを実行していれば、お客様からの合図を見逃すことは少なくなると思うのです。
また、事前にテーブルごとに担当するスタッフを決めることも一案ですね。
担当するテーブルのお客様は常に、決まったサービススタッフが気を配れば、お客様の合図には即応えることができるようになります。
また、サービススタッフ間の競争意識も喚起することもでき、サービススタッフ自身ににお客様がつくように仕向けることも可能です。
「○○チャンにサービスしてもらって食事をしたいからね」
なんて言って来店してくれるお客様があったらいいですよね。
実際、ここまでのサービスを売り物にしている飲食店は結構あります。
ちょっと高級感はありますけどね。
では、サービススタッフがお客様のテーブルを常に注意していれば、どのようなことがおこるのでしょうか?
宇井氏によれば、
それをすればお客様の食事の進行状況や、今お客様が何を欲しているのか
ということを的確につかめ、お客様の状態に応じたサービスができる、
ということ。
たとえば、いろいろと複数の料理をオーダーされた場合、本来なら最初の料理を食べ終わった頃を見計らって次の料理を配膳するべきです。
ところが、そのようなことをしてくれるお店は、ほんの一部です。
多くのお店では、まだ料理を食べ終わってもいないうちから、次の料理がでてきてしまい、テーブルの食器を整理しながら何とかして置いていくような事態になっています。
もうテーブルは料理の食べ残しの皿で一杯になってしまっています。
あなたも経験ありませんか?
私はこのような経験は結構しています。
このようなことが起きてしまうのは、料理をつくる厨房にも問題があるのですが、多くの場合は、サービススタッフの不注意が原因になってます。
中間サービスが自分たちの仕事だという意識が薄いのです。
また反対に、食べ終えた食器がいつまでもテーブルにあるようなことや、次の料理を配膳する時になって前に食べ終えた食器を片づけるということが平然と行われています。
これは、ものすごく多いですよ。
次の料理を出す場合には、前の料理の食器を片づけてからであるはずなのに、作業の効率を優先するのでしょうか、一緒に作業をしているのですね。
たしかに、作業としては合理的なのですが、サービスという点では、いかがなものでしょうか。
また、食べ終えた食器を下げるときでも、黙って下げるのではなく、必ず「お下げしてもよろしいですか?」と声をかけて下げることは当たり前のことですよね。
これは、多くのお店で実行されているこのなので問題はありません。
しかし、やっていないとすれば大問題ですよ。
次に、水やお茶などのサービスについてですが、時々忘れられていることがあったりします。
「お水、欲しいよね」
「そうね、今度誰かが近くに来た時にお願いしようね」
なんてヒソヒソ話をされたら、失格と思ってください。
そうそう、「タダの水ばかりでは売上にならない」と言って、意識的にお水やお茶のサービスを控えているお店もあると聞きます。
わからないでもありませんが、これはあくまでも中間サービスなのです。
お客様のテーブルへの注意力の“ものさし”として考えたほうが良いでしょう。
「水も気がつかんのか!」と思われたら損です。
水ばかりでドリンクのオーダーしていただけないのは、お店側のセールス力の不足であり、お客様のせいではありませんからね。
ところで、コース料理も販売している飲食店があります。
このコース料理は中間サービス付であることをわかっていますよね?
コース料理というのは、複数の料理を集めたも、というだけではありません。
料理を出したり、食べ終わった頃を見計らって食器を下げたり、次の料理の配膳の準備をしたり、その間にドリンクなどのオーダーを受けたり、お水やお茶のサービスをしたり、という中間サービスが重要な要素を持っています。
単品をその都度オーダーする場合には、サービススタッフはその時その時で臨機応変に手が空いている人がサービスすることになります。
しかし、コース料理のオーダーの場合は、それではいけません。
決まった一人のスタッフがすべてをコントロールしなければならないのです。
複数のスタッフに手伝ってもらうことはありますが、お手伝いのスタッフは必ず自分勝手な行動をとることなく、決められたリーダーの配下としてサービスを構成することになります。
コース料理は、約2時間ほどをかけてお客様に料理と中間サービスを提供している独特な商品なのです。
ですから、本来なら単品を集めた価格よりも高く設定するのが当たり前です。
ところが、「コース料理のほうがお徳です」と価格の安いことをアピールして販売しているお店が多いのは本当に残念に思います。
このようなお店は、中間サービスという考えを持っていないのです。
つまり、飲食店は「たべもの屋」であり「サービス業」ではないと捉えているからなのでしょうか。
コース料理は、おいしい料理を素晴らしいサービスを受けながら、楽しむためにあるというのが私の考え方なのです。
ここにコース料理の醍醐味を見つけてもらいたいと思います。